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2024年3月6日(水)

論戦ハイライト

金権腐敗の核心追及

参院予算委 田村委員長の質問

 「自民党による組織的犯罪は明確だ」。日本共産党の田村智子委員長は5日の参院予算委員会で、自民党派閥の政治資金パーティーをめぐる裏金事件を取り上げ、真相解明と企業・団体献金の全面禁止を求めました。田村氏はさらに、経済政策の破綻を認め大企業の利益最優先からの転換をはかり、男女賃金格差の是正を主張。大軍拡をめぐる政策の根本からの転換を迫りました。


田村 裏金 自民による組織的犯罪の認識あるか

岸田首相 組織的犯罪の定義承知していない

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(写真)岸田文雄首相(左)らに質問する田村智子委員長=5日、参院予算委

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 自民党派閥の政治資金パーティーをめぐる裏金事件について追及した田村氏。ところが、岸田首相は裏金事件が自民党による組織的犯罪との認識すら示しませんでした。

 田村氏は、自民党の「調査結果」の「一部の派閥が還付金を収支報告書に記載しないよう所属議員等事務所に指導していた」という記述を示し、「収入がありながら、政治資金収支報告書に記載しなかった場合、どうなるか」とただしました。

 総務省の笠置隆範選挙部長は、総務省が「5年以下の禁錮または100万円以下の罰金に処す」と答弁。田村氏は、次のようにただしました。

 田村 派閥が「議員事務所に記載するな」と指導した。これは組織的な犯罪が行われたということではないか。

 首相 組織的犯罪という言葉の定義は承知していない。

 田村 収支報告書に書くなと指導した。犯罪を指導したということではないか。誰がやったか確認するか。

 首相 政倫審をはじめ、さまざまな場で説明を尽くしてもらう。

 「組織的犯罪」との認識をかたくなに拒む岸田首相は、真相解明にも背を向けました。

 田村氏はさらに、自民党の「聞き取り調査に関する報告書」には還付金(裏金)を議員本人が管理していたと答えた議員が12人いると指摘。確定申告に所得を含めず、所得税を逃れた場合の罰則について質問。国税庁の星屋和彦次長は「10年以下の懲役もしくは1000万円以下の処罰に処す」と答弁しました。

 田村 所得隠しも悪質な所得税法違反だ。(議員個人の)脱税の疑いもある。

 首相 検察の捜査を通じて刑事責任は追及された。

 田村氏は、世論調査(ANN、2月26日報道)では、キックバック(還付)を収支報告書に記載していなかった国会議員は「議員辞職する必要がある」と考える人が65%に上ることを挙げ、「犯罪をしておいて、議員を続けるのかという国民の声が示されている」と批判しました。

 さらに田村氏は「選挙の年だけ増えた裏金は、選挙運動への寄付ではないか」と公職選挙法違反の疑惑もただしました。ところが岸田首相は「参院選挙の年の還付金等について、より詳細な事実関係の把握を求める声は承知している」と答弁するのみでした。

 田村氏は「真相解明は国会にも問われている」と強調し、参院政治倫理審査会の全面公開での迅速な開催、裏金に関わった自民党参院議員ら32人の証人喚問などを求めました。

田村 企業・団体献金の全面禁止を。問われるのは自民党

首相 さまざま議論ある

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 「金権腐敗の根を断つには企業・団体献金の全面禁止しかない」―田村氏は、立場の違いを超えて企業・団体献金禁止を求める声が広がるなか、自民党が妨害者となっていると指摘。企業からの政治資金に依存し、政治をゆがめてきた自民党の本質を浮き彫りにしました。

 政治資金パーティーは、政治家個人・派閥に対して禁じられている企業・団体献金の「抜け道」となってきました。岸田首相の資金管理団体の収入に占める政治資金パーティー収入の割合は、2022年には98%を超えます。(グラフ)

 田村氏はパーティー券の多くを企業・団体が購入しているのではないかと追及。岸田首相は「多くの企業に参加いただいている」と認めました。

 田村 政治資金パーティーの「抜け道」を使えば、どんどん資金を集めることができる。企業・団体によるパーティー券の購入も含めて企業・団体献金の全面禁止が必要だ。

 首相 法律に従って対応しており、問題がない。

 田村 パーティーに形を変えれば(資金を)集められる、その仕組みがおかしい。

 首相 政治資金の透明性を高める努力をしなければならない。

 岸田首相は、企業・団体献金禁止をかたくなに拒否。1970年の最高裁判決を持ち出し「企業の政治活動の自由との関係で献金は重要だ」などと述べました。

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 田村氏は、70年の最高裁判決後、国会議員が有罪となった贈収賄事件の数々を指摘(表)。90年代には一連の金権腐敗事件に対して企業・団体献金の廃止を求める世論が多数となったのに、94年に当時の細川護熙首相と自民党の河野洋平総裁が交わした合意で、政党・政党支部への企業・団体献金、パーティー券という抜け道を残してしまったと批判しました。

 それから30年、この抜け道が金権腐敗の温床となっています。田村氏は「同じ轍(てつ)を踏むわけにいかない」と主張。野党がそろって今国会で企業・団体献金禁止を求め、公明党も「禁止という方向を求めていかなければ」と述べているとして、「問われているのは自民党だ」「『抜け道』をふさぐ企業・団体献金の全面禁止を決断すべきだ」と迫りました。

 ところが岸田首相は「透明性の向上」が必要などと繰り返すだけ。田村氏は「そもそも企業献金はどういう本質を持つのか」と指摘。岡原昌男元最高裁長官の「本来営利団体である会社だから…もうけにならぬことをやることは株主に対する背任になる。見返りを要求する献金だと涜職(とくしょく=汚職)罪になる恐れがある」(93年11月2日、衆院政治改革に関する調査特別委員会)との発言を紹介し、次のようにただしました。

 田村 これが企業献金の本質である以上、金権腐敗の根を断つには廃止しかない。

 首相 企業献金についてはさまざまな議論が積み重なって、現状の法律がある。

 田村氏は、03年に経団連が「優先政策事項」に基づく事実上の自民党の政策評価と一体に、企業献金促進の方針を打ち出したことを指摘。当時の経団連会長が、朝日新聞の取材に「政治への影響力を行使しようという狙いか」と問われ「結局そういうことになる」とまで答えています。

 田村 自民党への献金で政治を動かそうという、まさに国民の参政権の侵害だ。

 首相 民主主義において法人の寄付を否定する理由はない。こういった議論もあった。

 田村 企業・団体献金の全面的な禁止が問われているのに、自民党だけが答えない。ここに自民党の本質が表れている。

経済政策破綻

田村 法人税減と消費税増 失敗明らか、転換を

首相 好循環実現…(取り繕うのみ)

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 田村氏は、企業献金に依存する自民党の財界優先で破綻した経済政策を転換し、行き詰まりを打開するよう迫りました。

 田村氏は、財界の要求で法人税率を引き下げ、消費税の税率を引き上げた結果、昨年12月に自民党など与党がまとめた「税制改正大綱」でも「賃金や国内投資は低迷してきた」「法人税改革は意図した成果を上げてこなかった」と認めていると追及しました。

 田村 岸田首相も同じ認識か。

 首相 賃金や投資が伸び悩んできたことが事実であるという評価だ。

 岸田首相は、法人税減税の失敗を初めて認めました。田村氏は、過去30年間で大企業の税負担率がマイナス42%となり利益が452%、株主配当が784%、内部留保が241%となる一方、賃金の伸びは7・8%にとどまったことをあげ、法人税減税と一体の消費税増税の政策は失敗だったと迫りました。

 田村 法人税減税と消費税増税がセットで行われ、実質賃金が大きく落ち込み家計消費が冷え込み経済が停滞した。法人税減税を見直し、消費税を減税する政策転換が必要だ。

 首相 分配と成長の好循環を実現する。

 失敗を取りつくろう岸田首相に田村氏は「消費税が法人税減収の穴埋めになっただけだ」と批判しました。

 田村氏は、政府の賃上げ税制についても「税制改正大綱」が中小企業で「税制措置のインセンティブ(刺激)が必ずしも効かない」としていると指摘。賃上げ減税が続く一方、実質賃金は21カ月連続マイナスになり、雇用者数で7割を占める中小企業に効果がなかったと強調。賃上げに向けて中小企業家同友会が社会保険料負担の一部免除を強く要望し、日本商工会議所も新たな助成制度の創設を含めた中小企業の賃上げ後押し制度を求めていると指摘しました。

 田村 新たな賃上げ直接助成が必要という声だ。

 首相 そういう考え方はとっていない。

 中小企業の声を無視する岸田首相。田村氏は「いつまで効果のない政策にしがみつくのか」と批判し、国内総生産に匹敵する内部留保を賃上げ直接助成の財源にすることに踏み出すよう求めました。

男女賃金格差

田村 間接差別なくすこと 政治の課題にせよ

首相 コース別人事の運用含め検討

 田村氏は、男女賃金格差の要因となっている間接差別をなくす政策を政府として取り組むよう求めました。

 田村氏は、内閣府に置かれた「働く女性の活躍を加速する男性リーダーの会」の「男女賃金格差を生み出す要因と構造の改革に集中することが必要」との指摘(23年11月)を「非常に重要だ」と評価。同会の参加企業である鹿島建設の男女賃金格差をただした田村氏に、厚労省は全労働者で56・2%、正規で56・4%、非正規で53・6%と女性の賃金が男性の6割以下であることを明らかにしました。

 田村氏は、同社の総合職の女性比率が8%、一般職が93・5%とのデータを示し、「総合職と一般職の賃金格差がそのまま男女賃金格差になっている。コース別人事が男女賃金格差を固定化する間接差別になっている」と強調しました。

 国連の女性差別撤廃委員会は、雇用における間接差別の認識不足が日本政府にあると繰り返し指摘しています。田村氏は「総合職は、家庭を顧みず残業も単身赴任もこなすのが当然とするのは、家庭のことは女性という性別役割分担の考えが根深くある」と指摘しました。

 田村 非正規雇用や一般職は、圧倒的に女性が多くて賃金が安い。それは家計補助的な働き方でよいという女性の位置づけがある。こうした間接差別をなくすことを政治の課題にすべきだ。

 首相 コース別人事の運用の仕方も含めて、どのような取り組みが効果的なのか検討を続けていく。

 田村氏は、女性活躍推進法が25年に期限を迎えるとして、企業に対し男女賃金格差のデータ公表に加え、格差の要因分析や格差是正の計画公表の義務付け、政府による奨励と監督を行い、名称も「職場におけるジェンダー平等推進法」にするなど、ただちに検討を始めるよう迫りました。

際限なき軍拡

田村 軍需企業参加し議論 異常ではないか

首相 決しておかしなことではない

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 岸田政権が急増させる軍事費。田村氏は、防衛省が「防衛力の抜本的強化に関する有識者会議」を使い、政府が5年間で43兆円とする軍事費も突破する天井知らずの大軍拡の議論を始めようとしていると告発しました。

 田村氏が、2月19日の同会議で防衛省が提示した「ご議論頂きたい事項」の内容をただすと、加野幸司防衛政策局長は為替変動などが「装備品調達へ与える影響等も考えていくべきだ」などと説明(表)。田村氏は、際限のない軍備拡大・軍事費増の議論を防衛省自身が求めるものだと批判しました。

 木原稔防衛相が「43兆円の範囲内で防衛力強化を行う」と弁解したのに対し、田村氏は「すでに座長の榊原定征元経団連会長が『タブーなく議論』と発言している。軍事費増を政策に反映させるための議論をするのが有識者会議ではないか」とただしました。

 田村氏は、長射程ミサイルの開発・量産を防衛省から受注する三菱重工の現会長が同会議のメンバーだと指摘。同社が軍事部門の売り上げを2027年までに22年3月の倍の1兆円規模になると見込み、自衛隊からの天下りトップが同社だと強調しました。

 田村 こういう企業が有識者会議のメンバーにいるのは異常ではないか。

 首相 決しておかしなことではない。

 田村氏は、大軍拡で最も利益を得る企業が、タブーなき大軍拡の議論をするメンバーであることを異常と判断できない岸田政権は「たががはずれている」と批判し、大軍拡の中止を求めました。


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