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2024年3月5日(火)

赤字訪問介護事業所 約4割

厚労省調査で判明

報酬減で閉鎖・倒産も

 政府・厚生労働省は来年度の介護報酬改定で、訪問介護事業所が他の介護サービスより高い利益をあげているとの同省調査を根拠に訪問介護の基本報酬を2~3%引き下げる予定です。ところが同じ調査で訪問介護事業所の36・7%が「赤字」状態であることが分かりました。全国の約1万2600事業所にあたります。引き下げが実施されればこれらが閉鎖・倒産に追い込まれる可能性もあり、「在宅介護の崩壊」が現実になりかねません。


グラフ

(拡大図はこちら)

 政府が基本報酬引き下げの根拠としているのが同省の「2023年度介護事業経営実態調査」です。訪問介護は3105事業所を対象に調査、1311事業所が有効回答しています。厚労省は全介護サービス平均の収支差率(利益率)が2・4%なのに比べ、訪問介護の平均収支差率は7・8%と高いことを引き下げの理由にしていました。

 ところが本紙が厚労省から入手した同調査結果資料によると、収支差率が「0%未満」の訪問介護事業所が36・7%(481事業所)を占めることが分かりました。日本共産党の宮本徹衆院議員が2月6日の衆院予算委員会で指摘していた詳細が判明したもの。この比率からすると、約3万4400カ所(2022年4月)の訪問介護事業所のうち赤字は1万2600カ所以上に上ります。

 また収支差率は、すべての値を小さい方から順に並べた真ん中にあたる「中央値」では4・2%だったことも厚労省資料で分かりました。「平均値」の7・8%と大きな乖離(かいり)があります。訪問回数が月400回以下は収支差率が1%台ですが、同「2001回以上」は13%台と10倍以上の開きがあります。ヘルパーの移動時間がほとんどない集合住宅併設型や、都市部の大手事業所が「平均値」を引き上げています。

「崩壊寸前」 引き下げ撤回を

愛知社保協介護保険部会委員 榑松(くれまつ)佐一さん

 名古屋市内の全訪問介護・ケアマネ事業所に報酬改定への「意見」を出そうと働きかけたところ「崩壊寸前」の声が次々寄せられました。政府が赤字を知りながら引き下げるのは、小規模事業所はつぶれても構わないと考えているからでしょう。経営実態調査は複雑で、未回答には事務職員がいない零細事業所が多く含まれ、赤字比率はもっと高い可能性があります。

 厚労省が「加算を取ればプラス改定だ」などと強弁しているのは噴飯ものです。基本報酬引き下げは直ちに撤回するべきです。


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