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2024年3月4日(月)

豊かな教育実践が萎縮

奈良教育大付属小 「出向人事」に反対広がる

ネット署名始まる

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(写真)川地亜弥子さん

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(写真)付属小の実践をまとめた『みんなのねがいでつくる学校』(クリエイツかもがわ)

 奈良教育大学付属小学校は教員の創意工夫による豊かな教育実践を重ねていました。ところが県教育委員会からの指摘を受けた大学側が同小の教育課程について学習指導要領等に照らして「不適切」だと変更を要求。「研鑽(けんさん)を積む」ためとして、大学が雇用する正規教員全員を対象に他校への「出向」を命じる方針です。同校の教育を守りたいとの声が広がり、ネット署名も始まっています。

「わかり方が柱」

 同校は秋に公開研究会を行い、全国から多くの教員、研究者が訪れます。教育実践は『みんなのねがいでつくる学校』(クリエイツかもがわ)という本にまとめられています。本の解説を書いた神戸大学准教授の川地亜弥子さんは同校の教育課程について、「子どものわかり方を柱として編成していることが特徴です。長年の研究の蓄積があるからこそだと思います」と話します。

 同校で「不適切」とされた事例はいずれも教員集団が子どもの成長・発達を踏まえて練り上げた、教育的理由のあるものでした。たとえばローマ字を指導要領で記述された3年に加え4年でも扱っているのは、子音と母音という抽象的概念が理解できる学年で扱うことがふさわしいという理由です。

 「教育課程を編成する主体は学校です。学習指導要領はその基準とされていますが『大綱的に定めるもの』としています。子どもの実態や学びの要求にこたえるために、教育の専門家として子どもに適した年次で指導することなどは当然認められるべきです」と川地さんは話します。

 大学側は1月に国に出した報告書で同校の授業等を「不適切」としましたが、文部科学省の意向が働いた可能性があります。

 報告書によれば、昨年4月、奈良県教育委員会からの指摘で同大学が調査を開始。いったん、同9月に「調査報告書(中間まとめ)」がまとまります。同10月、奈良教育大学学長、副学長ら4人が文科省に出頭。その直後から学習指導要領との詳細な比較を行う追加調査を行い、国への報告書ができたのです。

 大学は2月29日、「研鑽を積む」ことを目的に同校の教員を同意のないまま他校へ「出向」させる方針を示しました。奈良教育大学付属学校園教職員組合付属小学校分会の発信によれば対象は全員で「2年間で半数、その後は未定」としています。同校は19人の独自採用教員と県が人事交流で派遣する数人の教員等で構成しています。異例の出向に、教員や保護者は「付属小の教育がまわらなくなる」と声をあげています。

「創意工夫」推奨

QRコード

 川地さんも加わった「みんなのねがいでつくる学校」応援団の呼びかけ人は79人に広がっています。「奈良教育大の附属小教員出向人事に反対する緊急署名」(QRコード)も始まりました(10日まで)。

 川地さんは言います。「学習指導要領は完ぺきなものではありません。『学校による創意工夫』や『研究や蓄積を生かす』ことを推奨しています。国や大学は、現場の教員による多様な一人ひとりの子どもに寄り添った授業や教育課程づくりを萎縮させないでほしい。子どもの願いに根ざした授業や教育課程づくりが大切だと広げていきたい」


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