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2024年2月28日(水)

きょうの潮流

 当時の最先端技術だったそうです。井手(用水路)にたまる火山灰や土砂を下流に押し流す「鼻ぐり井手」。水路に渦が巻くような仕掛けが牛の鼻輪の形に似ていることから「鼻ぐり」と名付けられました▼熊本県菊陽町にある江戸時代の土木遺産です。阿蘇の水を集めた白川の中流域に位置し、井手のおかげで広い地域に水がゆきわたり、収穫高が3倍にもなったと伝えられています▼いまその町がハイテク産業の誘致にわいています。台湾大手の半導体メーカー、TSMCが工場を新設。キャベツ畑がひろがる中にそびえたった東京ドーム4・5個分の巨大な建物は、その存在感から“黒船”に例えられるほど▼人口4万3千余の町の景色も一変させました。閑散としていた最寄りの無人駅は人であふれ、周辺はマンションの建設ラッシュ。商店や飲食店もバブル景気にわいています。一方で、くらす人たちからはこれが地域の発展につながっていくのかと疑問の声も▼日本政府が1兆2千億円もの巨額を投じて支援する国策。スマートフォンから兵器まで、あらゆる電子機器に使われる半導体は国の戦略物資といわれます。しかし「経済安保」を口実に莫大(ばくだい)な国費を特定の大企業につぎ込むとは、異常な予算の使い方ではないか▼生活環境の急激な変化や地下水の枯渇を懸念する声は住民や営農者にひろがり、半導体の製造に使われる有機フッ素化合物(PFAS)による汚染の心配も。豊かな水とともに生きてきた町に漂う黒船への不安です。


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