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2024年2月15日(木)

主張

難民支援拠出停止

ガザ住民の命奪う暴挙撤回を

 パレスチナ難民支援の中核となっている国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)に欧米諸国や日本が資金拠出を停止しました。事業の縮小・中断に追い込まれかねません。ガザ地区ではイスラエルによる無差別攻撃で死者・行方不明者が3万人以上となり、170万人以上が避難を強いられています。拠出停止は人道危機に陥っているガザ住民の命をさらに奪うことになる暴挙です。直ちに撤回し、拠出を再開すべきです。

人道危機いっそう深刻に

 ガザ地区のイスラム組織ハマスが昨年10月7日、イスラエルの民間人を襲撃した事件に、UNRWAの一部職員が関与したと指摘されたことが発端です。1月末、米国が拠出停止を表明し、ドイツ、スウェーデン、日本などが同調しました。停止表明は、上位20カ国の拠出金の約7割に上ります。

 国連は、関与が疑われた12人の現地職員を調査し、加担が明らかになった者を解雇した上、調査を続けています。にもかかわらず、拠出は停止されたままです。

 ハマスのテロ行為は許されません。しかし、3万人近いUNRWA職員のうち一部の現地職員の関与を理由に、活動を停止させることは、パレスチナ難民全体を危機に陥れる非人道的行為です。

 UNRWAは、イスラエル建国と第1次中東戦争の際、住み家を追われたパレスチナ難民を支援するため、1949年の国連総会決議に基づいて設立されました。ヨルダン、シリア、レバノン、ガザ、ヨルダン川西岸地区などで暮らすパレスチナ難民の命の綱です。

 特にガザ地区はイスラエルによって完全に封鎖され、230万人の住民はUNRWAの援助物資がなければ食べていくこともできません。国連のグテレス事務総長は「ガザでは誰もが飢えている」(1月31日の演説)とし、UNRWAの活動を保証するよう各国に呼びかけました。

 国際司法裁判所(ICJ)は1月26日、ガザ地区で集団殺害を防ぐあらゆる手だてをとるようイスラエルに命じました。国連総会は昨年12月、日本を含む153カ国の賛成で即時人道的休戦を求める決議を採択しました。UNRWAへの拠出停止はこれらの決定に真っ向から反する措置です。

 欧州ではノルウェー、スペイン、ベルギーなどが拠出継続を発表しました。ブラジルは、拠出停止がICJの決定を損なうと批判し、イスラエルが150人以上のUNRWA職員を殺害したことに留意すべきだと表明しました。主要な国際NGOも拠出停止の撤回を求める共同声明を出しました。

岸田政権は米追随やめよ

 パレスチナ難民問題が長期化した責任はイスラエルにあります。武力でパレスチナ人を追放し、ヨルダン川西岸とガザを占領下に置いています。国際法で占領国に義務づけられた住民保護も放棄しています。代わって役割を担っているのがUNRWAです。イスラエルを政治的・軍事的に支援する米国の責任も重大です。

 岸田文雄政権はイスラエルや米国の主張をうのみにして、拠出を止めました。米国に追随する、恥ずべき外交姿勢です。日本国際ボランティアセンター(JVC)など百数十の団体が連名で、拠出再開を要請しました。岸田政権は真剣に受け止めるべきです。


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