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2024年2月11日(日)

29回党大会決定“突破点”

東アジアの平和どうつくる

野党外交を積み重ねて「二つの発展方向」提起

 全党で討議・具体化が始まっている日本共産党第29回大会決定。改定綱領の生命力を世界論、日本改革論、未来社会論のそれぞれで発展させ、多数者革命と党の役割、党建設の歴史的教訓まで深く踏み込みました。1990年の第19回党大会以来、11回の党大会決議案の作成に携わってきた志位和夫議長が「今回の党大会決定ほど、多面的で豊かで充実した決定はそうはない、と言っても過言ではない」(全国都道府県委員長会議での中間発言)と語るほどの内容です。大会決定が示した理論的、政治的な“突破点”を5回シリーズでみていきます。(写真の肩書はすべて撮影当時のもの)


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(写真)ASEAN本部を訪れた志位和夫委員長(右)と田村智子副委員長=2023年12月21日、ジャカルタ

 日本共産党は第29回党大会で、昨年12月の同党代表団による東南アジア3カ国訪問の成果をふまえ、東アジアの平和構築を目指す「外交ビジョン」について、新たに二つの発展方向を打ち出しました。

 (1)東南アジア諸国連合(ASEAN)のインド太平洋構想(AOIP)成功と北東アジアの課題解決のための「二重の努力」(2)東アジアの平和構築を成功させるために政府だけでなく、政党・市民社会の共同したとりくみの呼びかけ―です。

 この新しい発展方向は、日本共産党の野党外交の積み重ねを踏まえた提起でした。

 日本共産党の野党外交は、第21回党大会第4回中央委員会総会の決定(1999年6月)にさかのぼります。この会議で、外国の政党との交流について、従来の共産党間の交流にとどめず、保守・革新、与党・野党の区別なく、双方に交流開始への関心がある場合、「自主独立、対等・平等、内部問題相互不干渉」の3原則に基づいて、関係を確立し、率直な意見交換を行い、可能な場合には共同の努力を図るという方針を決めました。

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(写真)マレーシアのトヤド外務副大臣(右)と夕食会で懇談する不破哲三委員長(中央)=1999年9月、クアラルンプール

 翌年の第22回党大会(2000年11月)では、同3原則を確認したうえで、外国の政府との関係についても、平和と進歩の課題で交流を発展させるとの方針を決めました。

 こうして、日本共産党の野党外交が本格化します。その先駆けとなったのは、1999年9月の不破哲三委員長(当時)を団長とする東南アジア歴訪(マレーシア、シンガポール、ベトナム、香港)でした。それまで関係を持っていなかった国にも大胆に訪問し、交流が始まりました。不破氏自身が「あたって砕けろ」という精神で、道を切り開いたと感想を述べています。

 この東南アジア歴訪の成果をへて、第22回党大会は、90年代に東アジア地域で起こった「平和の激動」の一つとして、ASEANの動きに言及しました。東南アジアが、非同盟、非核兵器、紛争の平和的解決など、平和と進歩の流れの強力な国際的源泉を形成していると指摘しました。

 日本共産党の野党外交は、その後、多面的に発展していきます。

 特にASEANとの関係で大きな節目となったのは、2013年9月の志位和夫委員長(当時)を団長とする東南アジア訪問(ベトナム、インドネシア)です。東南アジア友好協力条約(TAC)を基本に、平和の地域共同をすすめるASEANが、対話と信頼醸成など、非軍事のアプローチで安全保障を追求している実践について、実りある意見交換となりました。

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(写真)会談後に握手する志位委員長(右)とインドネシアのワルダナ外務副大臣=2013年9月、ジャカルタ(面川誠撮影)

 この訪問の成果も取り入れ、第26回党大会(14年1月)で提唱されたのが「北東アジア平和協力構想」でした。北東アジア規模で紛争の平和的解決を定めた「友好協力条約」を結ぶことをはじめ、北朝鮮問題、領土問題、歴史問題をめぐる四つの目標と原則を打ち出したものです。

 日米・米韓の軍事同盟が存在するもとで、軍事同盟に対する立場の違いがあっても、一致して追求しうる緊急の提案として提唱されたものでした。

 ASEANの実践している平和の地域共同のとりくみを、北東アジアにも構築しよう、北東アジア版のTACをめざして対話と協力を強めようと呼びかけた同構想は、当時の関係国や識者から評価を受けました。

 しかし、その後の情勢は、これが簡単には進まないことも明らかにしました。

 このもとで、日本共産党は22年1月、東アジアに平和をつくる「外交ビジョン」を提唱し、その後、関係諸国との対話を行ってきました。

 「外交ビジョン」は、軍事的対応の強化ではなく、ASEAN諸国と手を携え、AOIPの実現を共通の目標にすえ、すでにつくられている東アジアサミットを活用・発展させて、東アジアを戦争の心配のない地域にしていくための憲法9条を生かした平和外交です。

 このビジョンは、昨年12月の日本共産党代表団の東南アジア訪問で、どこでも歓迎されました。ASEAN本部では、地域の平和と安定を促進するASEANと同じ線に沿っていると評価されました。緊密な交流があるベトナムとラオスには、従来から日本共産党の「外交ビジョン」や諸政策が伝わっていて、AOIPでの協力が確認されました。

 インドネシアのハッサン元外相は、いきなり北東アジアで条約を結ぼうとするよりは、「前提として、いかに良い“対話の習慣”を育むかが優先だ」と指摘しました。すでにある北東アジア諸国も参加する枠組みを強化・活用していこうという助言で、「外交ビジョン」と共通する方向でした。

 同時に、AOIPの成功だけでは、軍事同盟や米中対立、北朝鮮問題や歴史問題のような北東アジアの課題が自動的に解決するわけではありません。北東アジア地域の責任あるアプローチが求められています。その点で、日本共産党の提言「日中両国関係の前向きの打開のために」は、東南アジアでも強い関心と評価の声が上がりました。

 同時に、「外交ビジョン」は、20世紀から21世紀への世界の構造変化という日本共産党綱領の世界論のうえに立って展開されているビジョンです。

 第28回党大会(20年1月)で行った綱領の一部改定では、20世紀に起こった構造変化の最大のものとして、植民地体制の崩壊を挙げました。

 植民地体制の崩壊で、民族自決権があらゆる人権の土台として世界公認の原理におしだされ、世界の民主主義と人権の流れの豊かな発展をもたらし、かつ国連憲章に基づく平和の国際秩序を発展させるうえでも巨大な力を発揮しているとしました。

 この大きな構造変化が、一番見事な形で現れている地域として、いま日本共産党は東南アジアに注目しています。この点から、日本共産党綱領は、ASEANが、平和の地域共同体をつくりあげ、この流れをアジア・太平洋地域に広げていることが「世界の平和秩序への貢献となっている」と明記しています。

 今回の訪問の成果は、日本共産党の野党外交の積み重ねと改定綱領の世界論に裏付けられたものです。それは、(1)東アジアで、ASEANと連携して「対抗でなく対話と協力」のAOIPを推進していくことが重要であるとともに、北東アジアの固有の問題の解決には北東アジアの独自の努力がいる(2)東アジアの平和構築は、各国政府・政党・市民社会が共同したとりくみを行ってこそ、達成できる―という「外交ビジョン」の二つの発展方向に豊かに実っています。(小林俊哉・党国際委員会事務局次長)

 ASEANインド太平洋構想(AOIP) 2019年6月のASEAN首脳会議で採択された構想。日本共産党第29回大会決議は同構想について、「インド・太平洋という広大な地域を、東南アジア友好協力条約(TAC)の『目的と原則を指針』として、『対抗でなく対話と協力の地域』にし、ゆくゆくは東アジア規模の友好協力条約をめざそうという壮大な構想である」と述べています。


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