しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

赤旗電子版の購読はこちら 赤旗電子版の購読はこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加

2024年2月11日(日)

きょうの潮流

 目と目でわかり合うこと。それができる指揮者は、演奏者に愛される―。村上春樹さんとの対談のなかでそう語っていました。オーケストラの呼吸をぴたっと合わせるのって至難の業。だから自分は顔や手の動きで息をとるのだと▼世界的な指揮者、小澤征爾さんは「個」を大切にしながら、それをまとめることに情熱を注ぎました。音楽には国境がない。いろんな人がいて、いろんな考えをもっている。それが一緒になって、一曲をつくるから“味”がでると話したように▼「満洲」に生まれ、5歳のときに母親が買ってきたアコーディオンが音楽との出合いでした。日本への引き揚げ先では空襲にあい、戦後の生活は貧しく。しかし周りの人に支えられながら、海外で武者修行を重ねました▼人びとが争う戦争を体験したことで、心を一つに合わせてつくりあげる音楽の世界に没頭していきました。自身が創立し、毎夏開いてきた「セイジ・オザワ 松本フェスティバル」。その30周年のときにこんなメッセージを発信しています▼「音楽は、言葉も国も宗教も政治もこえて、人と人の心をつなげることができる。音楽を通して、ぼくらは同じ星に住む、同じ人間であることを感じて、みんなでひとつになれることを願っています」▼被爆60年に際しては広島で市民らとコンサートを開き、ヒバクシャ国際署名に名を連ねたことも。後進の育成にも尽力してきた「世界のオザワ」。奏で続けた交響曲は、人間への深い愛情に満ちあふれていました。


pageup