2024年1月23日(火)
国が巨額支援の半導体企業 PFAS汚染源か
排水口から指針2.6倍
三重・四日市
半導体の世界大手キオクシア工場の排水口から、国の暫定指針値の2・6倍もの有機フッ素化合物(PFAS)が検出されたことが大きな問題になっています。同工場は929億円の国の補助金を受けます。巨額の国費が投じられる半導体企業がPFASの汚染源になっている可能性があります。(日隈広志)
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キオクシアは、「フラッシュメモリー」など情報記憶の半導体メモリーの売り上げで国内最大手。その主力の三重県四日市工場は、住宅地に隣接した丘陵部に東京ドーム15個分の敷地を構え、生産量でも世界有数の半導体製造拠点です。
住民らでつくる「四日市公災害市民ネット」が昨年9月から11月に市内の河川など26カ所を調査した結果、キオクシア工場と河川をつなぐ排水口から、規制対象物質のPFOAとPFOSの合算値で1リットルあたり125・93ナノグラムを検出。指針値の2・6倍になりました。また、キオクシアが排水を流している地下雨水管の海岸部の排水口からは、指針値の8倍にあたる同403・24ナノグラムを計測しました。
米国の研究では微量でも飲料水にPFOA、PFOSが含まれれば、腎臓がんの発症や抗体低下の増加が指摘されています。
日本政府はPFOA、PFOSなど3物質の新規製造や輸入を禁止しています。
PFASは半導体の製造に広く使われています。分析を行った京都大学の原田浩二准教授は、禁止前に製造された物質の混入が想定されるとして「キオクシアの工場が汚染源になっている可能性は高い」と指摘しました。
本紙の取材に、キオクシアは、市民ネットの調査結果を承知しているとして排出の原因など「工場の調査を実施している」と回答しました。
半導体産業に巨額の助成を行う国・県がPFAS汚染を放置することは許されません。
PFAS(ピーファス) 1万種類に上り、フライパンや衣料品、半導体など幅広い製品の製造に使用される化学物質。自然界で分解されにくく「永遠の化学物質」と呼ばれ、環境破壊や発がんなどの健康被害の危険があります。国は、国際的にも規制対象のPFOA(ピーフォア)、PFOS(ピーフォス)、PFHxS(ピーエフへクスエス)の3物質について水質管理の暫定指針値を1リットルあたり50ナノグラムに規定。米国でのこれらの飲料水の基準値は同4ナノグラムで、日本での規制強化が求められています。