2024年1月16日(火)
主張
刷新本部と裏金
自民の無反省は際立つばかり
自民党が派閥の政治資金規正法違反事件を受けて設置した政治刷新本部(本部長・岸田文雄首相)の少なくない議員に、パーティー収入の一部を裏金化している疑いが浮上しました。刷新本部は38議員で構成し、最多は安倍派の10人です。メンバーになった安倍派10人中9人に裏金疑惑があると報じられています。刷新本部については、派閥ぐるみで違法行為を繰り返していた安倍派から多くの議員を起用したことに「どこが刷新か」と批判が上がっていました。岸田首相はメンバーを入れ替えないと明言しており、反省のなさが一層際立ちます。
安倍派の10人中9人が
政治刷新本部の初会合で岸田首相は「国民の厳しい目、疑念の目が注がれている」「自民党自ら変わらなければならない」(11日)などと述べました。しかし、国民が求める裏金事件の解明には全く触れず、各派閥のパーティー収入の不記載・虚偽記載についても経過の説明などもしませんでした。
政治資金規正法に反する行為があったのは、最大派閥の安倍派だけではありません。主要5派閥に広がっており、自民党全体の体質と、自民党を成り立たせている「派閥」というシステムの是非そのものが問われています。ところが、刷新本部幹部には麻生太郎副総裁や茂木敏充幹事長など派閥の領袖(りょうしゅう)が就任しました。他のメンバーの構成も「党内バランスに配慮した『派閥政治』を象徴する」(「東京」12日付)人選となりました。
無派閥の菅義偉前首相が麻生氏とともに最高顧問に就きました。菅氏は安倍晋三元首相時代の官房長官として安倍官邸の中枢に長年身を置いてきました。「政治とカネ」疑惑を深刻化させた安倍政治から脱却する方向を示すことは期待できません。
今回裏金が指摘されている刷新本部の安倍派9人は、ノルマを超えて集めたパーティー券売上金のキックバック(還流)を受けたり、ノルマ超過分を派閥に納入せずに「中抜き」したりしていたとされます。それぞれの裏金の額は直近5年間で数百万円~数十万円とみられ、本部長代理となった岡田直樹・元地方創生相が最も多額だったと伝えられています(「朝日」13日付)。
安倍派の裏金は5年間で総額6億円近くにのぼり、所属議員(98人)の大半が関わっている疑いが持たれています。安倍派の事務総長経験者の松野博一前官房長官、西村康稔前経済産業相など派閥の中枢幹部は軒並み検察の事情聴取を受けています。所属議員から逮捕者も出ました。刑事事件の中心的な捜査対象となっている安倍派から10人も刷新本部に加えたこと自体、岸田首相が本気で政治資金問題を解決する姿勢がないことを浮き彫りにしています。
自浄能力ない政権に批判
首相は、刷新本部メンバーを巡る裏金が明らかになったことについて記者から問われると、「党が一致結束して議論を行うにあたって排除の論理は適切ではない」と述べ、メンバーから外さないことを強調しました。国民の感覚からあまりにかけ離れています。
共同通信が13、14日に実施した世論調査では刷新本部に「期待しない」が75・1%に上りました。自浄能力のない自民党政治を終わらせることが急務です。