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2024年1月14日(日)

主張

陸自幹部靖国参拝

侵略戦争美化の違憲の行為だ

 陸上自衛隊ナンバー2の小林弘樹陸上幕僚副長(陸将)ら陸自幹部が9日に公用車を使って靖国神社(東京都千代田区九段北)に集団参拝したことが本紙の取材で判明しました(10日付)。防衛省は11日、宗教施設への部隊参拝を禁じた事務次官通達(1974年)に違反する疑いがあるとし事実関係を調査することを明らかにしました。今回の陸自幹部の参拝は組織的に計画されていたことが既に分かっています。憲法の政教分離原則に反し、日本の過去の侵略戦争を美化する靖国神社の立場を肯定する行為は絶対に許されません。

組織的に実施計画作成

 防衛省によると、参拝したのは小林副長を委員長とする陸自の「航空事故調査委員会」の関係者です。小林副長は9日午前、東京都新宿区市谷にある防衛省に出勤し、午後に「時間休」を取得し靖国神社を訪れたとされています。

 本紙は、小林副長が午後3時半ごろに公用車で神社に到着し、先に来ていた複数の関係者と合流し、神職姿の人物に先導されて本殿を参拝、再び公用車で帰っていったことを確認しました。報道では、航空事故調査委員会副委員長の上野和士・装備計画部長(陸将補)らもおり、参加者は玉串料が徴収されたといいます。(「毎日」12日付)

 小林副長は本紙の取材に「私的(参拝)」だと答えました。しかし、防衛省の茂木陽報道官は12日の会見で、今回の参拝が航空事故調査委員会による「安全祈願」として企画され、「実施計画」が「行政文書として作成され、保存されている」と述べました。参拝を組織的に計画していたことは動かしがたい事実です。玉串料を参加者から徴収し組織としてまとめて靖国神社に納めた疑いもあり、「私的」という言い訳は通用しません。

 しかも、小林副長は本紙取材に「(参拝は)毎年の恒例」と語っています。事実なら集団参拝が毎年行われていたことになります。

 靖国神社は戦前・戦中、絶対主義的天皇制を思想的に支える国家神道の中核と位置付けられ、一般の神社とは異なり旧陸・海軍が管理していました。天皇制政府・軍部は天皇への「忠義」を尽くして戦死し「靖国の英霊」になることを最大の美徳として宣伝し、国民全体を侵略戦争に動員するための精神的な支柱にしました。

 戦後、その反省から憲法は「国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない」(20条3項)とするなど政教分離原則が盛り込まれ、靖国神社は一宗教法人になりました。

 一方で、戦争指導者として東京裁判(極東国際軍事裁判)で有罪となったA級戦犯を合祀(ごうし)するなど、侵略戦争を美化・正当化する「靖国史観」を振りまく中心的役割を今も果たしています。

戦争国家づくりの下で

 木原稔防衛相は12日の記者会見で、憲法20条3項の規定に照らして「誤解を招く行動は避けなければならない」と述べましたが、今回の参拝がこれに抵触することは明らかです。

 岸田文雄政権は2022年末に敵基地攻撃能力の保有を明記した安保3文書を閣議決定し、「戦争国家づくり」を推し進めています。今回の参拝はそうした意味でも極めて重大です。決して見過ごすようなことがあってはなりません。


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