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2024年1月11日(木)

主張

大浦湾で着工強行

新基地は破綻 不当工事やめよ

 沖縄県の米海兵隊普天間基地(宜野湾市)に代わる同県名護市辺野古の新基地建設で、防衛省沖縄防衛局が10日、大浦湾側の埋め立て工事を強行しました。斉藤鉄夫国交相が大浦湾側の埋め立て予定海域にある軟弱地盤の改良工事に必要な設計変更の承認を代執行したのを受けたものです。新基地建設に反対する沖縄県民の負託に基づき玉城デニー知事は設計変更を認めてきませんでした。県の反対を無視した工事強行に何の道理もありません。強く抗議します。

埋め立ては難航必至

 今回強行された埋め立て工事の設計変更は、大浦湾の埋め立て予定海域で見つかったマヨネーズ並みとされる軟弱地盤の改良工事を追加するため沖縄防衛局が申請したものです。公有水面埋立法に基づき県知事の承認が必要ですが、デニー知事はジュゴンやサンゴをはじめ大浦湾の豊かな自然環境の保全や地盤沈下など災害の防止に十分配慮されておらず、いつ完成するかも不確実で普天間基地の危険性の早期除去にはつながらないとして不承認を貫いてきました。

 これに対し岸田文雄政権は行政不服審査制度を乱用し、沖縄防衛局の申し出に基づき国交相が知事の不承認を取り消す裁決をするなど、なりふり構わぬ手段でデニー知事に承認を迫ってきました。岸田政権の主張を追認する不当な司法判断も続き、最終的には知事の処分権限が奪われ、国交相による代執行が強行されました。これは初の代執行であり、憲法が保障する地方自治の本旨や民主主義の理念を否定する強権発動でした。

 着工は強行されたものの、軟弱地盤の改良工事を含め大浦湾側の埋め立て工事は難航必至です。

 防衛省は、設計変更に基づく埋め立て工事と基地の施設建設に9年3カ月かかるとの見通しを示しています。このうち大浦湾側の地盤改良工事の期間は4年1カ月とされています。林芳正官房長官は10日の記者会見で「本日の工事着手が(9年3カ月の)起点に当たる」と述べました。さらにその後、新基地を米軍に提供する手続きなどに約3年が必要で、全体では約12年かかるとしています。

 今後、12年もかかるということ自体、「普天間飛行場の一日も早い返還につながる」との岸田政権の主張に反するものです。

 しかも、軟弱地盤は最深で海面下90メートルです。国内の作業船で地盤改良をできるのは70メートルまでで1隻しかないとされます。未改良の部分を残したまま埋め立てる計画ですが、専門家は沈下の危険を指摘しています。難工事は避けられず、今後も複数回の設計変更が必要になるとされます。約4年で終わる保証は全くありません。

 軟弱地盤の改良のため約7万1000本の砂杭(すなぐい)などを打ち込む予定で環境破壊も不可避です。

普天間無条件返還を

 費用も際限がありません。防衛省は総工費の見積もりを9300億円としています。うち埋め立て工事は3600億円です。しかし、2022年度末の埋め立ての進捗(しんちょく)率は14%ですが、支出は既に見積もり額の47%に達しています。単純計算で埋め立ての完成には1兆2200億円かかります。

 新基地計画の破綻は明白です。工事を直ちに中止し、普天間基地の無条件撤去を求める対米交渉こそ必要です。


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