2024年1月8日(月)
2024年 日本共産党は政治にどう臨む
NHK「日曜討論」 志位委員長の発言
日本共産党の志位和夫委員長が7日のNHK「日曜討論」の「党首に問う」で行った発言は次の通りです。司会は伊藤雅之解説委員と星麻琴アナウンサー。
星 続いて日本共産党の志位委員長です。よろしくお願いします。
志位 よろしくお願いします。
能登半島地震
救命・救出に全力 災害関連死を出さない
星 能登半島地震について聞きます。被災された方々や地域に今どのような対応や支援が必要でしょうか。
志位 現地では雨が降っており、夕方から大雪ということが言われており大変心配しております。
現瞬間で最優先するべきは、安否不明の方、倒壊家屋の下敷きになっておられる方、土砂崩れに巻き込まれている方、孤立集落におられる方などに対して、あらゆる手段を講じて、救命救出に全力を尽くすことです。
同時に、避難所が大変深刻な状況です。物資が不足しています。段ボールベッド、水、トイレ、食料をしっかり届ける必要があります。それから、インフルエンザが広がっており健康面での対応も万全を期して、災害関連死を出さない。これが大事だと思います。
先日の党首会談で岸田総理に、命を助けることと、助かった命を守り抜くこと―この二つを同時並行で、あらゆる力を尽くしてやってほしいということを提起しました。総理も大事な提起だということをおっしゃられましたので、ぜひその方向でやってほしいと強く求めたいと思います。
住宅再建、産業復興への支援、原発は廃炉に
伊藤 息の長い支援が必要かと思いますけれども、中長期的にどのような課題があると考えますか。
志位 中長期的には、まず住宅の再建です。とくに被災者生活再建支援法の対象を、全壊と大規模半壊だけではなくて、半壊や一部損壊も含めてもっと広げること、支援の額を抜本的に引き上げることが必要です。
それから、産業の復興という点では、輪島塗などが大損害を受けておりますので、中小業者、地場産業に対する直接支援をドンとやる必要があります。そういう産業の支援が必要です。
そして、原発の問題ですけれど、やはりトラブルが起こっています。詳細な事実関係をしっかり出してほしい。そして志賀原発(石川県)と柏崎刈羽原発(新潟県)は廃炉にしていく。私たちは全原発の廃炉を求めますが、この(二つの)原発については直ちに廃炉という決断が必要だと思います。
自民党裏金問題
自民党の組織ぐるみの重大疑惑 真相の徹底究明を
伊藤 自民党の派閥の資金パーティーをめぐる問題。これをどういうふうに受け止めていますか。
志位 安倍派、二階派に強制捜査が入ったわけですけれども、政治資金パーティーをめぐる裏金疑惑というのは、岸田派、麻生派も含めて全派閥に及んでいます。各派閥が所属国会議員を総動員して、企業・団体からパーティー券という形でお金を集めて、巨額の裏金をつくっていたシステムがあった。これを自民党が組織ぐるみでやっていたという大問題です。
政治資金規正法では、政治活動を「国民の不断の監視と批判のもとに置く」ために、資金を透明化することをルールとしているわけで、このルールを破ったという点で、まさに民主政治を根底から覆す大問題です。
ですから真相の徹底究明が必要です。誰がどれだけの裏金をつくったのか、その裏金を何に使ったのか、これを徹底的に明らかにしていく必要あります。
企業・団体献金は、パーティー券によるものも含めて全面禁止を
伊藤 そうしますと政治資金規正法の改正、必要かどうか。ポイントはどこにあるか。
志位 企業・団体献金の全面禁止、パーティー券によるものも含めて全面禁止が必要です。
この問題では歴史的な背景がある。1990年代の初頭に、当時の一連の金権腐敗事件を受けまして、「政治改革」ということが言われました。ところが、それが小選挙区制の導入にすり替えられてしまって、肝心の企業・団体献金は温存されました。政治家個人に対するもの(企業・団体献金)は禁止されたんですけども、二つの「抜け穴」がつくられました。一つは、政党と政党支部に対するもの(企業・団体献金)は、合法とされました。もう一つは、パーティー券の形での企業・団体献金も合法とされました。この二つ目の「抜け穴」を使って、今、裏金のシステムがつくられているわけですから、企業・団体献金はパーティー券も含めて全面禁止する。これが解決法です。
経済対策
最低賃金引き上げ、ケア労働者の賃上げ、消費税減税を
星 経済政策について聞きます。物価上昇を上回る賃上げの実現に何が必要と考えますか。
志位 これは経済界にお願いするだけじゃなくて、政治の責任でやれることをすべてやるという姿勢が大事だと思うんです。
まず中小企業支援と一体に最低賃金を時給1500円に引き上げる。
そのために日本共産党としては、大企業の内部留保が膨れ上がっていますから、時限的な課税をやりまして、5年間で10兆円の税収をつくって、それを中小企業支援にあてよう、課税に際しては適切な控除を設けて、大企業で働く方の賃上げも促進しよう。こういう提案をやっていますが、ぜひこれを実行する。
それから、ケア労働――保育や介護、医療で働く方、これは(賃金が)公定価格ですから、政府の責任で抜本的な賃上げをやる。
そして最後に、消費税の減税です。消費税の減税というのは物価を下げます。それから景気をよくする。ですから実質賃金を上げる上でも最大の力になる。これを断行すべきだと思います。
少子化対策
問題は「財源」にある。大事な税金は軍事ではなく子育てに
伊藤 「少子化対策」、これについては何が必要だと考えますか。
志位 私たちは今度の政府の案(「こども未来戦略」)というのは内容も貧弱だけれども、一番の問題は、「財源」だと思うんですよ。
「少子化対策」の「財源」と称して、医療保険料に負担金を上乗せしようという。そうしますと、国民からしますと負担増と給付減ということになります。それからインボイスの増税分を充てるという。こういうやり方は良くない。「少子化対策」のためと言って国民からむしり取るようなやり方は良くない。
なんでこうなるかと言えば、軍事費にべらぼうなお金を使っているからだと思うんです。来年度予算案の軍事費というのは8兆円まで膨れ上がりました。この2年間で2・5兆円も膨れ上がっている。この2・5兆円があれば、大学の学費を半分にして、入学金を廃止して、高校の完全無償化をやって、義務教育の給食費の無償化をやってもおつりがくる。大事な税金は軍事じゃなくて、子育てに使うべきだということを言いたいと思います。
日本外交
米国言いなりの大軍拡でなく、自主・自立の平和外交にきりかえる
星 外交について聞きます。国際秩序が不安定さを増す中で、日本が果たすべき役割をどう考えますか。
志位 米中が対立を深めるなかで日本の進路が問われていると思います。
私は、年末に東南アジアの三つの国(インドネシア、ラオス、ベトナム)をまわってきたのですけども、ASEAN(東南アジア諸国連合)の取り組みに学ぶ必要があると思います。
私は、インドネシアのASEANの本部に行きまして、「ASEANの成功の秘訣(ひけつ)は何ですか」と聞いたところ、こういう答えが返ってきました。「ASEANは、大国の関与を歓迎するけれども、どちらの側にも立たない」。つまり、アメリカの側にも立たない。中国の側にも立たない。中立と自主独立でいくのがASEANです。そして結束していく。これが答えとして返ってきました。ここに大事な点があると思うんです。
ひるがえって日本はどうかと考えますと、アメリカ一辺倒で、アメリカの言うままに大軍拡をやり、敵基地攻撃能力の保有をやり、北東アジアの軍事的対抗の緊張関係を強めている。ここから抜け出す必要があるのではないか。
アメリカの言いなりに軍事で突き進むのではなくて、ASEANがやっているように、自主・自立の平和外交に切り替える。これが必要ではないかと思います。
野党連携
国民的大運動と日本共産党の総選挙での躍進が現状打開のカギ
伊藤 これからの野党連携についてうかがいたい。今年の野党連携、これをどう考えていきますか。
志位 この間、市民連合のみなさんの尽力もあって、野党4党と1会派で、総選挙に向けた共通政策を確認しました。5項目の確認をしました。これを土台にして、市民と野党の共闘の再構築のために力を尽くしたいと思います。
ただ率直に言って、困難も大きい。ですから私たちはそういうもとで二つのことに力を入れたい。
一つは、国民運動です。自民党政治そのものを終わらせる国民的大運動を、暮らしの面でも、平和の面でも、そして政治腐敗の面でも起こして、自民党を追い詰めていきたい。
それからもう一つは、日本共産党自身の総選挙での躍進を勝ち取りたい。この力で本当に共闘を再構築していく道を開きたいと思っています。
伊藤 一言だけ、党大会がまもなく開かれますが、執行部の人事、続投はあるのかどうか、いかがでしょう。
志位 これは大会が決めることで、今日ここでは発言はできません。
伊藤 わかりました。ありがとうございました。