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2023年12月27日(水)

主張

学術会議法人化案

学問の自由脅かす方針撤回を

 内閣府の「日本学術会議の在り方に関する有識者懇談会」が21日、学術会議を「国とは別の法人格を有する組織にすることが望ましい」とする中間報告をまとめました。これを踏まえ内閣府は方針「日本学術会議の法人化に向けて」を決定しました。自民党や財界の意向に沿った「法人化ありき」の恣意(しい)的な方針であり、「学問の自由」を脅かす重大な内容をもっています。学術会議から強い懸念の声が上がっています。

独立性を損なう仕組み

 学術会議は2021年4月の総会決議「日本学術会議のより良い役割発揮に向けて」で、法人化には「解決すべき様々な課題」があり、「現在の国の機関としての形態は、日本学術会議がその役割を果たすのにふさわしい」との見解を示していました。しかし、中間報告はそれを踏まえるどころか、学術会議が独立して活動することと、「政府の機関であることは矛盾」すると断定し、方針はそれを踏襲しました。光石衛学術会議会長は、「法人化のメリットのみを挙げてデメリットの検討をしない結論ありきの内容であり、科学的な分析にもとづくものといえない」と批判しています。

 学術会議は、創立以来、日本の科学振興の必要から「国の機関」と位置づけられるとともに、「学問の自由」にもとづき独立性が保障されてきました。「独立性を求めるなら国の機関から切り離せ」との主張は、「国の機関だから首相による会員任命拒否は当然」という政府の主張の裏返しに他なりません。3年前、当時の菅義偉首相による会員任命拒否は「任命行為は形式的」とされてきた学術会議法に違反し、「学問の自由」を踏みにじる暴挙です。政府がすべきことは任命拒否の撤回です。

 ところが方針は、法人化によって学術会議の独立性を脅かす仕組みを求めています。主務大臣が任命する外部有識者による学術会議評価委員会や監事を新たに設置するとしました。中期計画の策定に評価委員会の意見を聞き、その執行状況の評価をうけることや、業務・財務の監査をうけることを義務づけています。学術会議の活動を政府の方針によって制約するものです。また、学術会議の会員選考に意見をのべる選考助言委員会や、運営の重要事項に意見をのべる運営助言委員会の設置も義務づけるなど、何重にも学術会議の独立性を損なうものです。

 中間まとめは、学術会議の予算増額要求を逆手にとって「法人化によって対価を徴収して審議依頼に応じること」を求め、方針は「財政基盤の多様化」を打ち出しました。産業界など特定の集団から対価をえる審議となれば、その利害に応じる助言を出すことになりかねません。国の予算こそ増やす必要があります。

合意のもとに行うべきだ

 学術会議は「科学者の総意の下に」設立された「科学者の代表機関」です(学術会議法)。あり方の見直しは、学術会議の合意のもとに行うべきです。政府は19年前の学術会議法改定の際、「(次回の改革は)より学術会議の側が主体になって改革の検討」をしてもらう(04年3月、当時の担当相)と国会答弁しました。すでに国民の支持を失っている岸田文雄政権が、学問の自由を脅かす法人化を強権的に進めることは許されません。


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