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2023年12月25日(月)

主張

技能実習の見直し

受け入れ制度の抜本的改正を

 岸田文雄政権の「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議」が先月末、小泉龍司法相に最終報告書を提出しました。人権侵害が多発し国際社会からも批判を浴びている外国人技能実習制度を廃止し、新たな制度を創設することが求められていました。しかし、最終報告書が新制度として示した「育成就労」は、技能実習を実質的に温存し、特定技能と連動させ一体化して運用する制度です。人権侵害を解決するための制度とは到底言えません。

看板掛け替えにすぎない

 技能実習は「技能移転」による「国際貢献」の名の下で、外国人を非熟練・低賃金の労働力として受け入れる手段にされてきました。国連ビジネスと人権の作業部会は8月、送り出し機関や監理団体による仲介手数料の廃止や同一労働同一賃金の確保など「明示的な人権保護規定を盛り込むことを期待する」と提起していました。ところが、「育成就労」は「人材確保と人材育成」を目的にすると看板を掛け替えたにすぎません。人権制約の仕掛けはそのままです。

 技能実習の現場で人権侵害が起きる根本的な原因として挙げられるのは、例外的な場合を除いて職場移転の自由がないことです。技能実習生の失踪者数は2020年に5885人、21年に7167人、22年には9006人と増加し続けています。

 最終報告書では「やむを得ない事情がある場合」は転籍の範囲を拡大・明確化するとしながら、日本語・技能要件などで転籍を制限しています。さらに、当分の間、分野によって1年を超える転籍の制限期間の設定を認める経過措置を設けることを検討するとしました。それが盛り込まれたのは、とりまとめ議論の最終盤、関係業界の働きかけとこれと結んだ与党の一部議員によって押し切られたためとされます。労働者が当然に持つ職場移転の自由を制限しては、人権侵害問題を解決できません。

 監理団体をそのままにすることも大問題です。監理団体が最低賃金以上支払わないよう圧力をかけるケースなどが出ています。多重下請け構造の最上位大企業の責任も重大です。最終報告書は、監理団体の許可要件等を厳格化するなど「適正化する」としますが、受け入れ企業と監理団体の役員が兼任することさえ排除していません。受け入れ企業から独立できない監理団体制度はやめるべきです。

 技能実習生は、多額の借金を背負って来日します。最終報告書は、2国間協定により、外国人本国の送り出し機関の取り締まりを強化し、手数料負担を外国人本人と受け入れ機関が適切に分担するとしますが、これまでの取り組みを見ると実効性は疑問です。ハローワークなどの政府機関が、受け入れ企業の外国人労働者に対する労働条件の明示や違反行為の摘発に関与するなど、不当な手数料の根絶、悪質なブローカーを排除することが求められます。

人間としての権利を守る

 必要なことは、外国人労働者と家族が人間らしく生きる権利を保障され、生まれてくる子どもとともに日本で働き、暮らせる制度にすることです。日本語教育の充実など生活支援体制の確立も重要です。最終報告書を撤回し、技能実習制度の廃止と、外国人受け入れ制度の抜本的改正を求めます。


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