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2023年12月16日(土)

主張

安保3文書1年

国のあり方覆す道阻む運動を

 岸田文雄政権が2022年12月16日に安保3文書を閣議決定してからきょうで1年です。同文書は、他国の領域内にあるミサイル発射拠点などを直接たたく敵基地攻撃能力の保有と、軍事費をGDP(国内総生産)の2%へと倍増する大軍拡を打ち出しました。この1年で岸田政権が突き進む大軍拡がいかに危険な道であるかがいよいよ浮き彫りになっています。

米追従の戦争国家づくり

 「安倍(晋三)政権において成立した平和安全法制(=安保法制)によっていかなる事態においても切れ目なく対応できる体制が既に法律的に整っているが、今回、新たな3文書を取りまとめることで実践面からも安全保障体制を強化することになる」

 岸田首相は3文書の閣議決定後の記者会見でこう強調しました(22年12月16日)。

 安倍政権は15年に安保法制の成立を強行し、違憲の集団的自衛権の行使を可能にするなど、米軍が海外で始める戦争に自衛隊が参戦する「戦争国家づくり」を“法制面”で進めました。岸田政権が決定を強行した安保3文書は、敵基地攻撃能力の保有と大軍拡によって“実践面”で「戦争国家づくり」を推進しようとするものです。

 3文書の決定に先立つ22年10月、米国のバイデン政権は、「国家安全保障戦略」を策定し、同盟国も動員して中国を軍事的に包囲する「統合抑止」を掲げました。そうした下で、3文書は「日米両国がそれぞれの戦略を擦り合わせ、防衛協力を統合的に進めていく」(同文書)ために策定されました。米国の対中国軍事戦略に日本を組み入れるものに他なりません。

 岸田首相は前述の会見で「3文書は、戦後の安全保障政策を大きく転換する」と強調する一方、「専守防衛の堅持」など「平和国家としての日本の歩みは今後とも不変」と述べました。

 しかし、3文書に基づき敵基地攻撃兵器として調達しようとしているのは、最大で中国の内陸部にまで到達する射程2千~3千キロの長距離ミサイルです。しかも、敵基地攻撃能力保有の狙いの一つは、先制攻撃も選択肢とする米軍主導の「統合防空ミサイル防衛」(IAMD)への自衛隊の参加です。

 米国が先制攻撃を含む戦争を始めれば、日本は攻撃されていないのに、安保法制に基づき集団的自衛権を発動し、自衛隊が敵基地攻撃を行うことになります。「専守防衛」や「他国に脅威を与える軍事大国にならない」という立場と両立しないことは明白です。

 そもそも歴代政府は「平生から他国を攻撃するような兵器」を持つことは「憲法の趣旨とするところではない」としてきました。安保3文書は、敵基地攻撃能力の保有は憲法違反としてきた政府見解を何の説明もなしに百八十度転換するものです。

国民生活破壊につながる

 3文書は、23年度から5年間の防衛省予算を43兆円とし、27年度には他省庁の関係予算も含め軍事費をGDPの2%(11兆円規模)にするとしました。主な財源は増税や国の借金である国債の増発、「歳出改革」により、国民生活の破壊につながるのは必至です。

 憲法の平和主義に基づく国のあり方を根底から覆す「戦争国家づくり」を許さない国民的な運動を大きくする必要があります。


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