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2023年12月1日(金)

生活保護減額 国に賠償命令

名古屋高裁 初の判断

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(写真)判決が出され、「完全勝訴」を掲げる弁護士=30日、名古屋高裁前

 愛知県内の生活保護利用者13人が国や名古屋市など3市を相手取り生活保護基準引き下げ処分の取り消しを求めた「新生存権裁判」(いのちのとりで裁判)の控訴審判決が30日、名古屋高裁でありました。長谷川恭弘裁判長は原告が敗訴した一審判決を退け、引き下げ処分取り消しと、一連の訴訟では初めて、国にそれぞれ1万円の慰謝料を支払うよう国家賠償を命じました。

 長谷川裁判長は、国が引き下げ(13~15年)の根拠とした厚労省の統計「生活扶助相当CPI(消費者物価指数)」について、「学術的な裏付けや論理的整合性を欠いた独自の指数」と断じ、「引き下げ処分は生活保護法に違反するだけでなく、厚労大臣に重大な過失がある」と判断。「受給者は余裕のない生活を強いられてきた」として国家賠償責任を認めました。

 控訴審判決は原告が逆転敗訴した大阪高裁(4月)に続き2件目。全国29地裁で同様の訴訟があり、国の賠償責任を認めたのは初めて。

 算定基準となった08年~11年の「物価下落率」は、厚労省の統計では4・78%ですが、総務省が出す一般的な統計では2・35%であり、倍以上の差があります。

 原告は「恣意(しい)的な計算方法を用いて、物価指数が引き下げられた。『物価偽装』そのものだ」と主張し、憲法25条や生活保護法に違反すると訴えてきました。控訴審では国から反論はありませんでした。

 裁判所前で「完全勝訴」が掲げられると、喜びの声が沸きあがりました。報告集会で原告は「10年に及ぶたたかいだった。涙が出るほどうれしい」、「地裁判決でがくぜんとなり、今日までひどい思いをしてきた。やっと報われた。本当にありがとうございました」と謝意を述べました。

 内河惠一弁護団長は「慰謝料まで認められ、心を打つ人間らしい判決。この判決を現実にするため、たたかいを続けていく」と話しました。


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