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2023年11月28日(火)

主張

国大法改悪案審議

大学の自治を壊す暴走許すな

 事業規模の特に大きい国立大学に「運営方針会議」の設置を新たに義務づける国立大学法人法改悪案が20日に衆院を通過し、今週にも参院で審議入りします。

 大学自治への乱暴な介入だとの批判が、大学関係者だけでなくメディアの中でも急速に広がっています。にもかかわらず、衆院審議で、与党は野党の質疑時間をわずか5時間しか認めませんでした。まともな説明抜きに改悪案採決を強行したことは重大です。

国家権力が人事に介入

 法案に盛り込まれた運営方針会議は、大学の中期目標・計画や予算・決算など大学運営の重要な方針を決定し、学長の選考基準などに意見を述べることができる権限も持ちます。会議の決定通りに運営が行われていない場合は、学長に改善措置を要求する権限まで与えています。文字通り、大学の最高意思決定機関となります。大学の教職員や学生の意思とは無関係に大学運営の重要な方針を決定することになりかねません。

 法案では、会議の委員を文部科学相の承認を経て学長が任命すると定めています。大学の人事に国家権力が介入する根拠を与えることになります。

 これらは、大学の自治の根幹を脅かすものです。大学の自治は、大学の構成員が大学運営に参加する民主的仕組みであり、学問の自由を保障するために不可欠なものです。

 同会議の設置対象を拡大する理由について文科省はまともな答弁をしていません。昨年5月の国際卓越研究大学法案の国会審議では、会議設置はその他の大学には適用しないと述べていました。それにもかかわらず、卓越大に認定されていない大学にも会議を設置するとしました。検討過程すら明らかにしないことは大問題です。

 日本共産党の宮本岳志衆院議員は文科委員会で、検討過程に大学関係者を加えるべきだと質問しました。これに対し文科省は国立大学協会に説明したと答弁しました。しかし、国大協の永田恭介会長は、17日の記者会見で法案の内容は「閣議決定で法文が出るまで知らなかった」「法文が成立する前に概要は知らされるべきだった」と述べ、強い危惧を表明する声明を発表しました。大学関係者の合意は得られていません。

 政府の意に沿う運営方針会議を設置させるのは、大学に軍事研究を強要するためのものではないかとの懸念が広がっています。

 昨年12月に閣議決定された安保3文書の一つ、国家安全保障戦略に基づき、先端科学技術の防衛利用に向けて文科省も含む関係省庁が連携する閣僚会議が設置されています。マッチング事業や経済安全保障プログラムなどを活用して、大学や国立研究機関で生まれた研究成果を「デュアルユース(軍民両用)」の名で軍事転用する体制の整備も進められています。

軍事研究強要の懸念

 政府は、交付金を削減し競争的資金を増やす「選択と集中」で、国策に従うように国立大学を誘導してきました。しかし、主要大学は今も軍事研究を拒んでいます。

 学問の自由を侵害し、軍国主義が台頭し、戦争への道に突入した戦前への反省をないがしろにする国大法改悪案は、日本の民主主義を危うくするものです。徹底審議で廃案にすべきです。


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