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2023年11月28日(火)

全国の大学祭に自衛隊出展

「一方的な宣伝」に懸念

徳島大「今回限り」

 敵基地攻撃能力の保有など大軍拡を進める岸田文雄政権は、自衛隊の人員体制を確保するための「人的基盤の強化」を推進。勧誘の一環でもある広報活動を見直す方針です。そうした中で近年、全国各地の大学祭に自衛隊が出展していることが分かりました。大学内で自衛隊の宣伝が行われることに「学問の自由」や「大学の自治」の侵害を懸念する声が上がっています。(丹田智之)


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(写真)多くの学生や市民が訪れた徳島大学「常三島祭」=10月29日、徳島市

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(写真)徳島大学「常三島祭」のパンフレットに掲載された航空自衛隊西部航空音楽隊によるコンサートの告知

 国立の徳島大学(徳島市)で10月下旬、学生の実行委員会による「常三島(じょうさんじま)祭」が開催されました。例年にはない企画として注目されたのが、航空自衛隊の音楽隊によるコンサートです。

 自衛隊の企画は実行委員会の提案でしたが、徳島大学を卒業した自衛官から後輩の学生に直接、出展の打診があったのが発端とされています。

 当初、自衛隊側はコンサートの他に「車両の展示」や「制服(迷彩服)の試着」も提案していました。自衛隊出展の是非は教員の間でも議論に。容認する意見が出た一方で「大学は国家権力と一定の距離を置くべきで、自衛隊が大学内で活動することには慎重であるべき」だとの声も上がりました。「自衛隊の一方的な宣伝になる」との懸念もあり、政府の安全保障政策への批判を含めた討論会を併せて実施することになりました。

 徳島大学教職員労働組合(山口裕之中央執行委員長)は、大学祭とは学生が研究やサークル活動などの成果を披露する場であり、特定の外部団体による宣伝活動は「本来の趣旨から外れる」として河村保彦学長に説明を求めました。組合に対して大学側は、音楽活動やパネル展示のみ行うように実行委員会を指導したとして「次年度は行わず、今回に限り認める」と回答しました。

「軍拡に賛同と見られるのは問題」と学生

安保政策問う教育こそ

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(写真)徳島大学「常三島祭」で航空自衛隊西部航空音楽隊の演奏を聴く学生ら=10月29日、徳島市

 徳島大学の大学祭で航空自衛隊音楽隊のコンサートが企画された問題では、治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟や日本平和委員会、新日本婦人の会などの県組織が同企画に反対する立場で大学側に対応を要請しました。地元紙の徳島新聞も「空自コンサート 問題視する声」の見出しで大きく報じました。

 徳島県内に空自の施設はありません。当日は春日基地(福岡県春日市)に拠点を置く西部航空音楽隊の約30人が専用の大型バスとトラックの計2台で徳島大学のキャンパスに入り、体育館で10曲を演奏しました。

曲の合間には

 曲の合間には進行役の隊員が「演奏を通じて航空自衛隊について知ってもらうことを大事にしている」と述べ、日本の空を守るなどと説明。体育館の後方では、陸上自衛隊の災害支援活動をパネルにして展示し、陸海空の自衛隊を紹介するパンフレットの配布も行いました。

 総合科学部で政治学が専門の饗場(あいば)和彦教授は「安全保障政策には多様な意見がある。自衛隊の存在を肯定的に宣伝する活動を受け入れることは、大学が一面的な立場であるような印象が生じる」との懸念を示し、担当する国際政治学ゼミの学生たちと「自衛隊の是非を考える」と題した討論会を企画しました。

 饗場教授と「九条の会徳島」事務局長の上地大三郎弁護士が対談する内容で、自衛隊が企画・展示を行う日に約40人が参加。「自衛隊の任務と憲法9条の関係は?」「軍事一辺倒の安全保障政策でいいのか?」などの疑問に答えました。

 参加した総合科学部4年の女子学生は「軍事費を増やすなど国の政策に徳島大学が賛同していると見られることは問題だと思う。多くの学生が自衛隊について考える機会が必要だと感じた」と語りました。

 県内の私立大学の学園祭では今年、自衛隊のブース出展と車両展示(徳島文理大学)、海上自衛隊音楽隊のコンサートと車両展示(四国大学)がありました。国立の鳴門教育大学でも昨年の大学祭に自衛隊徳島地方協力本部が参加し、災害支援活動のパネルを展示しました。

全国に広がる

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(写真)群馬大学「荒牧祭」の自衛隊ブースについて投稿した群馬地方協力本部の公式X(旧ツイッター)

 全国大学高専教職員組合によると、自衛隊が大学祭で企画・展示を行う動きは各地に広がっています。

 自衛隊の公式SNSには、東京都の電気通信大学調布祭(今月下旬)で制服の試着ができるコーナーがあると投稿。同じく国立の群馬大学荒牧祭(同)では、高機動車などを展示しました。

 饗場教授は「表面的な“かっこよさ”をアピールして自衛隊を身近に感じさせる目的があるのではないか。大学では日本政府の安全保障政策のあり方を問い、自衛隊の本質について考える教育が求められている」と述べています。


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