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2023年11月25日(土)

きょうの潮流

 熱波の夏から一転、突然の冬の到来に気候変動を痛感する毎日。環境危機を現代美術で問う展示「私たちのエコロジー:地球という惑星を生きるために」(東京・森美術館)に出かけました▼世界16カ国34人の作家による約100点の多彩な表現。人間中心主義の経済活動を告発し過剰な資源開発の影響を可視化するとともに、自然保護活動や先住民の知恵を象徴する作品を通して未来の可能性を示唆します▼廃棄されたホタテの貝殻5トンを床に敷き詰めた作品は、観覧者がその上を歩くことができます。足元で割れる優しい音に太古の海を感じるひととき。一面の海底に都市や原子力発電所を現出させる映像作品は、水没して消える文明を暗示しているかのよう▼被爆した第五福竜丸と汚染された海が題材の岡本太郎「燃える人」、桂ゆき「人と魚」は反核運動の隆盛の中で描かれました。海岸で集めたプラスチックのゴミを燃やした巨大な塊は、広島市出身の殿敷侃(とのしき・ただし)の作品。3歳で被爆し終生、原爆症に苦しみました。核が最大の環境破壊であることを訴えます▼フィリピンの「漁民の日2022」は希望の映像作品です。困窮する漁師たちに作者が呼びかけて始めた水上パレードの様子が静かに流れます。思い思いに飾り付けた小船の数々。この祭りによって漁民は誇りを取り戻し団結を強めたといいます▼芸術は海や大地、空、草木、生きものへの共感の表現でもあります。その想像力を失った時、人間の自然への侵害は始まるのかもしれません。


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