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2023年11月16日(木)

在沖海兵隊 「海兵沿岸連隊」創設

中国想定の大規模再編 住民を戦闘に巻き込む

 米領以外で唯一、米海兵隊の拠点になっている日本。ベトナム戦争やイラク戦争など、侵略戦争に真っ先に投入されてきた“殴り込み部隊”が、中国を想定した大規模再編に乗り出しました。

離島に戦闘拠点

 米海兵隊は、沿岸から敵地に乗り込んで侵攻の橋頭堡(きょうとうほ)を築く「強襲揚陸作戦」を主任務としてきましたが、新たな部隊構想「フォース・デザイン2030」では、これに加えて長射程ミサイルを配備し、離島や艦艇から作戦を行う「海兵沿岸連隊」(MLR)の創設を打ち出しました。支配地域で強固な防御網を築いている中国に対して、従来の地上侵攻は困難との認識に基づくものです。

 15日、沖縄に新たに創設された12MLRが主任務とするのは、九州沖から沖縄、台湾、フィリピン、南シナ海にいたる「第1列島線」の離島に臨時の戦闘拠点を設け、小規模の部隊を無数に分散配置し、沿岸から中国軍を攻撃する「遠征前進基地作戦(EABO)」です。

 これまでの海兵隊は沖縄から海外への派兵を繰り返してきましたが、それだけではなく、中国の「沿岸」である沖縄そのものが戦場と化し、住民を巻き込むことになります。

日米の軍事統合

 第3海兵師団のワートマン司令官は15日の記者会見で「作戦拠点はすべて、日本政府と調整して決める」と述べましたが、米海兵隊の動向に詳しい軍事社会学者の北村淳氏は「世界で最も従属性が高い地位協定を結んでいる日本は、米国の軍事的要求をすべて受け入れてきた。宮古島、石垣島だけでなく沖縄本島や奄美大島、久米島、与那国島には間違いなくMLRが配備され、九州も可能性がある」と指摘します。

 加えて、重視されているのは米軍と自衛隊との「統合」です。米軍だけで長大な第1列島線での作戦の遂行は不可能だからです。北村氏は、「MLRの対艦ミサイルはせいぜい数十発の攻撃能力しかなく、弾薬補給が不可欠だが、多くの離島に分散配備している部隊への補給は極めて困難だ」と指摘。「自衛隊の地対艦ミサイル部隊を動員し、同時いっせいに攻撃する以外にない」と見ています。

 自衛隊は奄美・沖縄本島・先島諸島に相次いでミサイル部隊を配備し、12式地対艦誘導弾(能力向上型)など長射程の敵基地攻撃ミサイルの配備が計画されています。

基地負担の増大

 12MLRの発足は、沖縄の基地負担を増大・固定化する危険もあります。2013年の在沖縄米軍統合計画で米領グアムに移転を予定していた部隊のうち、第12海兵連隊は、12MLRに改編され、残留。第3海兵師団司令部も残留します。今年1月11日の日米安全保障協議委員会(2プラス2)は、グアム移転後の在沖縄海兵隊の兵力規模は、当初計画の水準(約1万人)に変化はないとしていますが、代わりにどの部隊を削減するのかいっさい示されていません。グアムに移転した部隊が訓練のため、沖縄に再展開する可能性も想定されます。

 (竹下岳)


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