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2023年11月12日(日)

主張

補正予算の軍事費

過去最高額潜り込ませる異常

 岸田文雄政権は10日に閣議決定した2023年度補正予算案について、消費税減税など国民の切実な願いに背を向けながら「物価高から国民生活を守る」ための「総合経済対策」を具体化したと宣伝しています。しかし、そうした「経済対策」とは無縁な8130億円にも上る軍事費を潜り込ませています。しかも、補正予算の軍事費としては過去最大となる異常さです。

当初と合わせ7.6兆円

 23年度当初予算の軍事費は、過去最大の6兆8219億円でした。これに今回の補正の軍事費を加えると、7兆6349億円に膨れ上がります。岸田政権が22年末に閣議決定した安保3文書に基づき、敵基地攻撃能力の保有をはじめとした大軍拡を一段と加速させるものです。

 補正の軍事費の内訳は、▽「自衛隊の災害への対処能力の強化等」1463億円▽「自衛隊等の安全保障環境の変化への適切な対応」6617億円▽「その他」50億円―となっています。

 「自衛隊の災害への対処能力の強化等」というものの、その8割近くに当たる1124億円は佐賀空港(佐賀市)に陸上自衛隊のV22オスプレイを配備するための施設整備費です。現在、オスプレイが暫定配備されている木更津駐屯地(千葉県木更津市)から25年7月までに移転を終えるため工事を加速させるとしています。

 「安全保障環境の変化への適切な対応」では、敵基地攻撃能力の保有として長射程ミサイルの早期取得などに1523億円を計上しました。木原稔防衛相が9月に就任し、国産の長射程ミサイルの配備を前倒しするよう指示したのを受けたものです。「12式地対艦誘導弾能力向上型」や「島しょ防衛用高速滑空弾」の開発の促進を狙っています。

 しかし、木原防衛相の指示については、メディアからも「どこに配備し、どんな事態に対し、どんな使い方を想定しているのか、具体像は示されていない。これでは、国民の支持と理解は広がらないのではないか」(「朝日」10月8日付)と批判が上がっています。憲法にも、「専守防衛」にも反する敵基地攻撃能力の保有にやみくもに突き進むことは許されません。アジア地域の軍事緊張をますます激化させるだけです。

 このほか、「安全保障環境の変化への適切な対応」を口実にしたものでは、「米軍再編の着実な実施」として3169億円を盛り込んでいます。このうち、米空母艦載機による着陸訓練(FCLP)の移転などのため馬毛島(鹿児島県西之表市)での施設整備費に2684億円を充てています。

辺野古新基地建設も強行

 重大なのは、沖縄県の米軍普天間基地(宜野湾市)に代わる名護市辺野古の米軍新基地建設費に326億円を計上していることです。辺野古新基地をめぐり、沖縄の民意を代表して反対を貫く玉城デニー知事と裁判で争っている最中であるにもかかわらず、あくまで建設を強行しようとする岸田政権の姿勢を示すものです。

 「普天間飛行場の一日も早い全面返還を実現する」としつつ、同基地の補修に12億円を盛り込んでいるのも大きな問題です。

 そうした点でも今回の補正予算案を認めるわけにはいきません。


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