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2023年11月8日(水)

日本共産党の財源提案の基本的考え方

大門政策委員会副委員長に聞く

 日本共産党が9月28日に発表した「経済再生プラン」が注目を集めています。その財源提案にも関心が寄せられています。日本共産党の大門実紀史政策委員会副委員長にその考え方について聞きました。

 ―まず、日本共産党は税・財政の果たすべき役割についてどう考えますか。

所得の再分配をつうじ格差是正をはかる

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 私たちは税・財政が果たすべき役割は、社会保障や教育をはじめ、国民の暮らしや営業をまもることと、能力に応じた税制や社会保障制度による所得の再分配で、格差の是正をはかることだと考えています。

 ところが、政府はこの本来の役割を投げ捨てて、まったく逆立ちした政策をすすめてきました。国民には社会保障改悪と消費税増税を押し付けながら、大企業・富裕層へは減税の大盤振る舞いを続けてきました。こうした暮らしを壊し格差を拡大する税・財政のあり方を抜本的に転換することが必要だと考えています。


 ―「経済再生プラン」の財源提案の基本的な考え方を説明してください。

暮らしを支え、消費と需要を創出する総額40兆円規模の「積極予算」

表

 「経済再生プラン」の財源提案は表に示しました。

 わが党の提案は、社会保障や教育、消費税減税など持続的な制度、暮らしを支え、消費と需要を創出する恒常的な経済対策に22兆円、内部留保課税による中小企業の賃上げ支援や奨学金返済の半額免除などの緊急対策に18兆円、合わせて総額40兆円規模の「積極予算」をすすめるという提案です。

 30年間もの長期にわたる経済の停滞・衰退、「失われた時間」の大きさからも、それを打開するには、従来型にとどまらない暮らしと経済を立て直す「積極予算」が必要です。その財源は財政の民主的改革と応能負担の税制改革、そして国債の適正な活用でまかないます。これがわが党の持続可能な税・財政改革の提案です。

 ―「積極予算」という言い方にインパクトを感じました。国債の活用について日本共産党はどのように考えていますか。

日本共産党の財源提案の基本的考え方は「積極的かつ健全な財政運営」

 わが党の財源提案の基本的な考え方は、国民の切実な願いを実現する財源を生みだすとともに、「暮らしをまもり、格差を是正する」という税・財政の本来の姿を取り戻す立場にたったもので、国債も活用します。具体的には次のように考えています。

 (1)コロナ対策や災害対策、物価高騰への緊急策などをはじめ緊急的・時限的な財源は、国債の発行など臨機応変な対応をすることが必要です。

 (2)社会保障、教育などの恒久的な制度を拡充するためには、税・財政構造の転換によって、持続可能な財源を確保します。安易に借金に頼ったのでは、格差を広げる税・財政構造を温存することになります。また、政府債務の急増は、激しいインフレを引き起こす危険があり、過酷な物価高騰で暮らしが破壊される事態は起こしてはなりません。

 (3)国民にとって積極的かつ健全な財政運営をめざします。現在も毎年20兆円前後の財政赤字があり、その財政状況からすれば、税・財政の改革によって、新たな財源を確保したとしても、政府の借金額それ自体は増加していくことになります。「借金を減らす」「財政赤字がたいへん」などを口実に、消費税を増税したり、社会保障を削減したりする緊縮政策を行えば、暮らしは破綻し、景気がさらに悪化して、その結果、財政危機もいっそう深刻化します。借金が多少増えても、経済が成長していけば、借金の重さは軽くなっていきます。国民の暮らしを応援する積極的な財政支出によって、健全な経済成長をはかり、そのことをつうじて借金問題も解決していく―そうした積極的かつ健全な財政運営をめざすことが必要です。

 ―この間、自公政権や財務省の緊縮政策を批判する論調が聞かれます。日本共産党はどうみていますか。

緊縮政策は財界の要求

 一般的に緊縮政策とは、財政規律を維持するために、歳出削減や増税を行うことです。一部の評論家の人たちは、財務省が緊縮政策の本丸といいますが、実際に緊縮政策を自公政権に強く要求し実行させてきたのは経団連や経済同友会など財界です。

 財界は、財政再建を口実に、再三にわたり社会保障の削減や消費税増税を求めてきました。しかしその本当の狙いは大企業の負担の軽減です。大企業の社会保障への負担を軽減するために社会保障費の削減を求め、法人税減税の代替として消費税の増税を求めてきたのです。

 自公政権はそれに応えて国民には緊縮政策を押し付ける一方、財界が要求する大企業や大株主への減税や大規模開発などには大盤振る舞いをし、大量の国債も発行してきました。つまり自公政権のすすめてきた緊縮政策とは、財政規律など最初から眼中になく、財界のために国民に負担を押し付ける政策だったのです。まさに大企業の利益を最優先する新自由主義の財政政策です。さらに、自公政権は大軍拡をすすめており、岸田政権の2年間だけでも2・5兆円も軍事費を増やしています。国民には緊縮財政、財界と軍拡にはばらまきの放漫財政というのが、自公政権の財政政策であり、この政策に正面からたたかってきたのが日本共産党です。

 ―緊縮政策に対抗するにはどうすればいいでしょう。

緊縮政策に反対する大きな共同こそ

 自公政権による長期にわたる緊縮政策は、国民の暮らしを疲弊させ格差を拡大しました。国民が反発、反対するのは当然です。財政赤字や国の借金の大きさを理由に緊縮政策を押し付けることにたいし、苦しい状況に置かれた人々が「借金してでも国民を救え」と思うのも理解できます。

 ただ緊縮政策に反対する一部の人たちは、自公政権の緊縮政策に反対し、たんに「国民への負担増を撤回せよ」「借金してでも国民の暮らしをよくしろ」というものでなく、日本銀行による国債引き受けを前提にした国債の大量発行を主張しています。それに賛同しないものにたいしては、「緊縮」「財政均衡主義」などとレッテルを貼り、批判もしています。

 いま重要なことは、財源論のちがい、国債発行への考え方のちがいで対立するのではなく、財界のための緊縮政策を阻止するために力を合わせ大きな共同を広げることではないでしょうか。

 ―日本銀行に国債を引き受けさせれば、借金をどんどん増やしても大丈夫という主張について、日本共産党はどう考えますか。

日銀の国債引き受けは高インフレ招き、暮らしに打撃与える危険な政策

 日銀の国債引き受けとは、政府の発行する国債を日銀が市場を介さず直接購入することです。しかし中央銀行による国債引き受けは、財政赤字の野放図な拡大を招いた過去の教訓をふまえ、世界各国でも、日本でも禁じられています(財政法5条)。

 その最大の理由は、野放図な国債発行が財政への信頼を失わせ、高インフレを招いて国民の暮らしに壊滅的な打撃を与える恐れがあるからです。そもそも中央銀行の仕事は物価のコントロールです。政府の求めるまま国債を買い取り、その分、通貨を発行せざるをえなくなったら、物価のコントロールなどできなくなります。もちろん物価は通貨供給量だけで決まるものではありませんが、中央銀行が物価コントロールする手段を失うことは極めて危険だと思います。

 日銀の国債引き受けを主張する人たちも、政府が国債を増発していくといずれ高インフレが起きる危険性は認めたうえで、それは増税などで抑制することができるといいます。しかしそんな保証はどこにもありません。いったんインフレが起きたら簡単に止められないことは歴史的に見ても、また現在のアメリカがインフレを抑制するために四苦八苦していることを見ても明らかではないでしょうか。

 そもそも高インフレで最も苦しむのは庶民です。高インフレのときに増税などすればますます暮らしが破壊されてしまいます。

 また政府が日銀に国債を引き受けさせる方針を表明しただけで、一気に円の信頼が失われ、海外勢がそれを投機のチャンスととらえ、為替をつうじた日本売りを仕掛けるなど、円の暴落、物価急騰、円建ての債券の売り浴びせが起こる危険性も否定できません。いずれにせよ、日銀の国債引き受けはさまざまな危険性をはらんだ政策であり、政党が責任をもって訴えられる政策ではないと思います。

 ―総選挙に向け強調したい点は何ですか。

税・財政の民主的変革をよびかけ、共同を広げ、自公政権を追い込む

 日本経済の長期停滞を打開するためにわが党の「経済再生プラン」を大いに訴え、経済無策の自公政権を追い込む選挙にしたいと思います。格差是正のために所得再分配機能を取りもどすことも急務です。いま大事なことは、大企業や富裕層優遇の税・財政のあり方を国民本位に民主的に変革するため、一致点での共同を広げるべきではないでしょうか。日本共産党はそのために全力を尽くす決意です。


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