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2023年11月6日(月)

自民・維新迫る「ライドシェア」解禁

無責任に安全性強調

 一般ドライバーが自家用車を使って有償で送迎する「ライドシェア」解禁の是非が今国会で議論になり、自民党の推進派議員や維新の会などが政府に規制緩和を迫っています。


 「“ライドシェア・イコール安全ではない”は違うと思う」――10月27日の衆院予算委員会で、自民党の小泉進次郎氏は、タクシーは酔っ払いや、暴行を働いたり暴言を吐く乗客を拒否できないが、ライドシェアなら拒否できるとし、ライドシェアの運転手はタクシーより安全だなどと主張しました。

 では、乗客は安全なのでしょうか。30日の同委員会で維新の会の一谷勇一郎氏は「海外のライドシェアアプリではドライバーとお客が双方に評価し合い、判断できる機能がある。また、アメリカのリフトのアプリは、女性やLGBTQの乗客がドライバーを選択できる機能もある」とし、安全性を強調しました。

実態把握せず

 ドライバーを選ばなければ乗車に危険を感じるという時点で、すでにライドシェアの危険性をあらわしています。米国ウーバーが提出した安全性報告書には、ウーバー利用に関連した性犯罪が2017年に2936件、18年に3045件、19年に2826件発生したと記載されています。

 また、米国では偽ドライバーの車に乗って犯罪に巻き込まれた事件も多発しており、在米日本大使館や現地の総領事館などが「安全の手引き」でライドシェア利用時の注意喚起を記載しています。

 世界各国での被害の実態をただした立憲民主党の辻元清美参院議員の質問主意書に、政府はライドシェア利用に関連して発生した性犯罪は20年に「米国ライドシェア企業」で998件と答弁しました。これは米ウーバー1社の安全性報告書から引用した数字で、他社の件数は反映していません。しかも、新型コロナウイルスの感染拡大で利用が前年より半減した20年の数字を使っています。

 政府がきちんと実態を把握せずに、国会でまともな質疑ができるわけがありません。

規制骨抜きに

 ライドシェア解禁論は、インバウンド需要や人手不足などによる都市部でのタクシー不足を理由に広まりました。岸田首相は国会質疑で「自家用車の有償利用のあり方について諸外国の先進的な取り組みを参考にしながら検討していく」と答弁しています。

 もともと、自家用車による有償旅客運送は、地域交通の衰退を背景に06年、道路運送法の限定的な例外として認められたものでした。ところが、政府は14年の省令改正で旅客対象を「地域住民」から「観光客をはじめ地域外からの訪問者」まで、運送地域を「過疎地域」から都市部も含む「公共交通空白地域」へと拡大しました。15年には国際戦略特区での訪日外国人運送も容認。例外を次々と拡大することで同法の規制を骨抜きにし、海外を参考にしたライドシェア解禁の下地をつくってきたのです。

 維新の東徹氏は1日の参院予算委で、「過疎地に絞るのではなく、観光地や都市部でタクシー業界とは別に新規参入もできる状況をつくるべきだ」と強調しました。まさに海外版のライドシェアそのものです。

 公共交通における人手不足の根本要因は低すぎる賃金であり、規制緩和により公共交通のコストカットを強いた政府の冷たい政策です。昨年運賃改定した東京都23区や名古屋などでは賃上げが実現し、タクシー運転手が増加しました。もうけ優先のライドシェアの運転手が、コストカットしたバスやタクシーですら撤退する交通空白地域で住民の足になり得るのか、疑問しかありません。いま必要なのは規制緩和ではなく、住民の足であるタクシーやバスへの手厚い支援です。(森糸信)


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