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2023年11月5日(日)

主張

国立大法人法改悪

大学支配に道開く暴走許すな

 岸田文雄内閣は10月31日、学術への政治介入につながる国立大学法人法改悪案を閣議決定しました。一定規模以上の国立大学は、新たに事実上の最高意思決定機関となる「運営方針会議」(合議体)の設置が義務づけられます。

 合議体は、3人以上の委員と学長で構成され、委員は学長が任命する前に文部科学相の承認が必要となります。政権の意に沿った少数者が、大学を支配・運営することになります。

独断で決められる合議体

 現在、国立大学の運営に関わる重要事項の最終決定権は学長にあります。教育研究に関することは各学部の代表らが参加する教育研究評議会に諮られ、最終的に学長と理事で構成する役員会の議を経なければ決められません。

 改悪案では、大学の重要事項のうち中期目標・計画、予算・決算に関する事項の決定権は、合議体に移管します。しかも学内の審議を経る必要がなく、独断で決められます。合議体の決定に基づいて運営がされていない場合は、学長に改善措置を要求できます。

 学長が反対しても賛成多数で決定されるなら、学長はそれに従わなければなりません。合議体は学長選考・監察会議に選考基準などについても意見を述べることができます。ある学長経験者は、大学と学長を「羽交い絞め」にする制度だと告発します。

 もともと合議体は、10兆円の大学ファンドの支援を受ける「国際卓越研究大学」が設置するものと総合科学技術・イノベーション会議の「最終まとめ」(2022年2月1日)で決定されていました。

 ところが改悪案は、理事が7人以上で規模が特に大きい大学を政令で特定国立大学法人に指定し、合議体を必置としました。合議体を卓越大学以外にも広げます。

 文科省は、東京大、京都大、大阪大、東北大、東海国立大学機構(名古屋大・岐阜大)の五つを特定大学に指定する予定です。特定大学以外の大学も文科相の承認を得るなら合議体の設置を可能とし、準特定大学に指定します。なぜ合議体設置を一般化したのか、岸田政権は全く説明していません。

 「日本の研究はもはや世界レベルではない」(『ネイチャー』10月25日付)と指摘される研究力低下の打開策として岸田政権が打ち出したのが大学ファンドでした。政府の「成長戦略」に沿った計画を示した数校を卓越大学に認定し、そこだけをファンドの運用益で支援する究極の「選択と集中」です。

 しかし、ファンドの運用は604億円の赤字で、当初描いた支援構想は崩れています。認定候補に選ばれたのは、「稼げる」分野への「選択と集中」を全学規模で行おうとする東北大1校だけでした。

場当たり的方針転換

 岸田政権は大学ファンドが事実上破綻したので、合議体を強要する改悪案をつくったのです。東北大のような「選択と集中」を他の大学に強いる狙いです。

 あまりに場当たり的な方針転換です。合議体を一般化する理由を説明できないのはそのためです。

 研究力低下は、04年の国立大学法人化以降、運営費交付金を削減し、競争的資金を増額する「選択と集中」によるものです。研究力を回復する道は、「選択と集中」の是正しかありません。改悪案は徹底審議の上、廃案にすべきです。


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