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2023年11月2日(木)

論戦ハイライト

大企業優遇やめ 国民守れ 平和守る政治に転換を

山添議員の予算委質問

 日本共産党の山添拓議員は、1日の参院予算委員会で岸田文雄首相の経済対策、税と賃金、武器輸出などを巡る政策を追及しました。“コストカット型の経済からの転換”を掲げる岸田政権に対し、山添氏は財界の求めるままに雇用を壊した政治の責任を自覚するよう強調。命とくらしの危機に対応するため、消費税減税、非正規ワーカーの保護、殺傷兵器の輸出の取りやめ、イスラエル・ガザ紛争の停戦や有機フッ素化合物PFASの調査などを強く求めました。


写真

(写真)岸田文雄首相ら閣僚に質問する山添拓議員(右端)=1日、参院予算委

経済対策

消費税減税 三つの効果

首相「考えていない」

 山添氏は、時限的な所得税減税などを表明した岸田首相の経済対策について「1年限りの減税、1回限りの給付、その後に大軍拡への増税に後期高齢者の医療保険料引き上げなど負担増が目白押しだ」と指摘。「減税というなら消費税の減税こそ行うべきだ」と迫りました。

 山添氏は、消費税の減税には「三つの効果がある」として▽生活必需品の値上がりは深刻で、消費税を下げれば買い物のたびに減税効果が発生する▽消費税は所得の低い人ほど負担が重いため、減税すれば所得が低い人ほど負担が軽減される▽消費税を一律5%に引き下げれば、インボイスも必要がなくなる―ことを指摘。次のように迫りました。

 山添 首相の認識はどうか。

 首相 そもそも消費税を下げることは考えていないので、効果についても考えていない。

 岸田首相の不誠実な答弁に、議場から「はぁー」とあきれ声のやじが飛びました。

 山添氏は、財界の求めるコストカット戦略の一つとして法人税減税が行われてきたとして「変革するというなら、大企業への増税から逃げるべきではない」と述べました。

 山添氏は「もう一つのコストカットが賃金だ」として、働く人をコスト扱いし、簡単に切り捨てられるシステムを財界の求めるままに政治が用意し、雇用を破壊してきたことを指摘。山添氏は今年、公表が始まった男女賃金格差では男性を100とした場合の女性の賃金割合の平均は非正規同士で8割前後、正規同士で7割台にも上ることを挙げ「男性は長時間労働が当たり前、女性は家事や育児や介護があるので家計補助的に非正規で、低賃金という状況をつくってきた」とただしました。

 山添 総理は本会議で、性別役割分業が賃金格差の「要因の一つ」と答弁した。そうであればこの現状こそ、変革が必要ではないか。

 首相 ご指摘の問題意識に立ち、働き方の壁、年収の壁といった課題に政治として取り組むことが重要だ。

 山添氏は「女性の仕事は、家計補助どころか生計の柱となっている」として「ならば、こうした現状こそ変革が必要だ」と述べました。

ヤマト解雇

ギグワーカーに保護を

 「労働者がコストカットされようとしている」―。雇用の問題をめぐり、山添氏は、ヤマト運輸が今年6月に、「クロネコDM(ダイレクトメール)便」の仕分けを担うパート社員に対し、日本郵便への業務移管を理由に来年1月での契約終了を通告した問題を追及。茨城県や神奈川県では、労働組合が団体交渉を通じて解雇・退職の強要を撤回させたと紹介しました。

 一方で、クロネコメイトと呼ばれるメール便の配達員については、ヤマト側が「労働者でなく個人事業主だから」との理由で団交を拒んでいると指摘。クロネコメイトは個人事業主でありながら、制服着用義務やGPSでの移動記録の管理など自由にできることが限られ、また、同様の仕事をするパート社員までいると強調しました。

 山添 同じように働く人が、会社の呼び方次第で個人事業主になったり労働者になったりするのは許されるのか。

 武見敬三厚労相 そうした問題が出てきた場合には各労働局の対応が求められる。

 山添 個人事業主だというのは会社が「偽装」したものだ。実質的に労働者と同じなら、紙きれ1枚で契約終了は許されない。

 山添氏は、ギグワーカーの団体交渉権や労災認定などが認められた事例は多数あるとして、「『偽装』を一掃し、労働者は労働者として扱われるべきだ」と主張。ギグワーカーの労働者としての保護を検討すべきだと迫りました。

 岸田首相は「『偽装』があるかないかも含め詳細を承知していない」とひとごとのようにいうだけ。山添氏は「働く側は使う側より弱い立場にある。きちんと保護される制度をつくるべきだ」と強調し、日本共産党が提案する「非正規ワーカー待遇改善法」の実現を求めました。

PFAS

健康調査の実施求める

政府、知見ないと背

 山添氏は、発がん性などが疑われる有機フッ素化合物PFAS(ピーファス)が、米軍基地や工場周辺をはじめ、地下水などで汚染が確認されているとして、国による健康調査の実施を求めました。

 東京都多摩地域の地元住民による自主的な血液検査の結果、米軍横田基地(東京都)の東側地域で高い血中濃度で、地下水の流れと一致しています。

 山添氏は、防衛省が今年6月に共産党のヒアリングで初めて横田基地からのPFAS漏出を認めた経緯をただしました。

 木原稔防衛相 2019年1月に米側から情報を入手した。

 山添 4年も隠していたのか。

 防衛相 速やかに情報提供すべきだった。

 山添氏は、自治体から米軍基地への立ち入り調査の要求があれば米側に求めるのか追及すると、防衛相は「米側に働きかけたい」と応じました。

 山添氏は、大阪府摂津市内の工場周辺の地下水などから全国一高濃度のPFOAが検出された問題で、市長からも「国が基準をつくり対策してほしい」と要望を受けたと紹介。山添氏は「米国では血中濃度の指標がある。日本でも血中濃度の検査と健康調査を実施するべきだ」と迫りました。ところが伊藤信太郎環境相は「血中濃度と健康影響の科学的知見はない」と述べ、調査に背を向けました。

 米国ウェストバージニア州ではPFOAメーカーの工場周辺住民に肝臓がんなどが相次ぎ、01年に住民3500人が提訴。メーカーが863億円を支払い和解しています。和解にもとづき7万人を調査し、少なくとも6疾患との因果関係が確認されています。

 山添 米国科学アカデミーは「重大な疾患と高い関連性が見つかっている」としている。

 環境相 世界保健機関などによる科学的知見がない。

 山添氏は「世界には知見がある。命と健康を守る立場にたつべきだ」と批判しました。

 山添氏は環境行政の原点は水俣病だとし、「必要な調査を行わなかったため被害拡大につながった。同じことを繰り返さないため、予防原則に立った対応を強く求める」と厳しく迫りました。

ガザ

暴力連鎖断つ外交こそ

首相「休戦」と言わず

 岸田首相は、イスラエル・ガザ紛争についての認識を問われても、「人道目的の一時的な戦闘休止が重要だ」としか述べません。

 山添氏は「なぜ休戦を求めないのか」「休止と休戦の違いは」と迫りましたが、岸田首相は「戦闘休止を行うことが重要だ」と繰り返すだけでした。

 さらに山添氏は、イスラエルが空爆も地上作戦も強めていると指摘し、次のように追及しました。

 山添 空爆、封鎖、住民への移動の強制、地上侵攻は、いずれも国際法違反だ。

 首相 わが国として十分状況を把握できていないので、確定的な法的な判断はできない。

 山添 難民キャンプが攻撃されたと今日も報道されている。これは国際人道法に反する。

 首相 実際の状況をしっかり確認したうえで法的な判断等もすべきだ。

 山添 ガザの封鎖は集団懲罰だと国連安保理で言われている。これは国際人道法に反する。

 首相 法的な判断はできない。

 岸田首相は何を聞かれても、かたくなに国際人道法違反だとの認識を示しません。

 山添氏は「これだけ犠牲が出ていて、これが国際法違反でないと考えるのか」と批判。日本は暴力の連鎖を断つ外交を行うべきであり、「問題の根本解決には、イスラエルが半世紀以上にわたって国際法違反の占領、入植を続け、日本を含め国際社会が放置してきたことの是正が不可欠だ」と強調しました。

武器輸出

死の商人国家への堕落

首相「方針変わらず」

 岸田政権は、昨年末の安保3文書で武器輸出を「安全保障環境の創出」のため「重要」と位置づけ、武器輸出拡大に向け「防衛装備移転三原則」や、その運用指針の見直し検討を進めています。

 山添氏は、武器輸出拡大に向けた8月の与党の実務者協議で、日本・英国・イタリアが共同開発を進める次期戦闘機を念頭に、政府が「第三国に直接移転できるようにすることが望ましい」との見解を示したとの報道に言及。また、2024年度の概算要求には次期戦闘機の共同開発を管理する国際機関への拠出金40億円を盛り込んでいるとして、「結論ありきだ」と指摘。木原稔防衛相は、「輸出の可能性を日英伊で検討している最中で、現時点で何ら決定していない。輸出のルールについての予算ではない」と言い張りました。

 また山添氏は、米海兵隊がF35Bでアフガニスタンを空爆し、英空軍がユーロファイター戦闘機でイラク・シリアを空爆するなど、共同開発の戦闘機が一般市民を殺害してきた事例を示し、「日本が共同開発する戦闘機はユーロファイター戦闘機の後継機と言われる。日本が共同開発する戦闘機がこうした殺傷に使われかねない」と警告。「共同開発国や輸出先の国が殺傷兵器をどう使うかについて、歯止めをかけることなどできないのではないか」とただしました。

 首相 方針は変わっていない。与党の議論を注視し、政府として判断する。

 山添 与党の協議は密室協議だ。決めてしまえば決まったこととして突き進むのは国会軽視・国民無視だ。

 さらに山添氏は、ロシアによるウクライナ侵略以降、軍需企業の米ロッキードマーチン社の株価は25%に急騰し、米レイセオン社のCEOは「国際セールスの機会を見込んでいる」と豪語しているなど「軍需産業は戦争が最大の需要だ」と強調。「戦闘機を売り歩くなど、日本が『死の商人国家への堕落』と言われても仕方がない」と批判しました。


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