2023年10月31日(火)
論戦ハイライト
経済政策転換の道 ここにあり 具体策示し実行迫る
宮本徹議員の質問 衆院予算委
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日本共産党の宮本徹議員は30日の衆院予算委員会で、「コストカット型経済からの30年ぶりの転換」を掲げる岸田文雄首相の経済政策を追及しました。賃金や公務労働、社会保障のコストカットを進めてきた歴代自公政権の責任を正面からただし、具体策を示して根本からの転換を迫りました。
非正規拡大政策に反省を
有期雇用は入り口規制を行え
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宮本氏は、この30年で賃金のコストカットが進められ、先進国で唯一「賃金が上がらない国」(グラフ)になったと指摘。賃金カットは、歴代自公政権による労働者派遣の自由化など非正規雇用拡大によって進められたとして「反省が必要だ。非正規雇用を広げてきた政策を抜本的に転換する必要がある」とただしました。
岸田首相は「デフレの悪循環が続いた」と述べる一方、反省は語りません。宮本氏は、デフレは自然現象ではないとして雇用政策の転換を求めました。
宮本氏は、有期契約の「出口規制」として、契約更新されて5年超で無期雇用に転換できるルールができたものの、依然雇い止めが多く労働相談件数も減っていないと指摘しました。「ヨーロッパの多くの国で有期雇用は入り口規制を行っている」と紹介。有期雇用は合理的理由がある場合に限定し、常時ある仕事は正規雇用が原則だとして、次のように迫りました。
宮本 日本でも入り口規制を行うべきだ。
首相 現行の無期転換ルールが適切に運用されるよう取り組む。
宮本 歴史的転換というなら、法改正を含めて考えるべきだ。出口規制だけでは有期雇用は減らない。
最賃1500円の実現速やかに
中小企業に大きな支援を
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宮本氏は、日本共産党が求めてきた最低賃金1500円が実現すればフルタイムで年収300万円、月手取り20万円になると強調。英国、オーストラリアなどの最低賃金は時給2000円前後(表)だと紹介しました。
最賃1500円を2030年代半ばに実現するという岸田首相に遅すぎると追及。賃上げに「あらゆる政策手段を集中的に講じたい」との岸田首相の発言をあげ「十数年かけるのは全然集中的じゃない」と批判しました。
宮本氏は、中央最低賃金審議会の公益委員見解に“赤字法人の賃上げ促進のための施策検討も必要”とあることを紹介。地方最賃審議会の答申でも、中小企業への支援策を求めるものが41都道府県、税・社会保険料減免を求めるものが25県で、昨年より増えていると強調し大規模な支援が必要だと迫りました。
宮本 私たちは5年で10兆円の、最賃引き上げにあたっての事業者への支援を提案している。事業者も働く側もウィンウィンで最賃を引き上げる。これを目指すべきだ。
首相 中小企業の省力化投資支援、価格転嫁対策を進める。
宮本 その程度の支援じゃ最賃を思い切って上げられない。歴史的転換じゃなく、従来の延長だ。
宮本氏は、重ねて本気の事業者支援を求めました。
非正規公務員の正規化こそ
財源含め国の責任果たせ
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公務労働者の非正規雇用が、増加の一途をたどっています。
宮本氏は、地方自治体で正規職員が15年間で28万人減り、逆に非正規職員が24万人増えたことを指摘(グラフ)。さらに非正規職員の4人に3人が年収250万円以下であり、時給の比較では正規職員の43%にすぎないとして、次のように迫りました。
宮本 民間には非正規労働者の正社員化を求めながら、政府・自治体が非正規雇用を広げるのは筋が通らない。
首相 勤勉手当について、2024年度から支給できるよう法改正を行うなど、処遇の改善に取り組んできた。
宮本 勤勉手当を出すのも大事だが、基本給のところでの巨大な格差は残ったままだ。ここを変えなければならない。
宮本氏は「非正規の割合は保育士56%、図書館職員73%、スクールソーシャルワーカー94%。専門性や継続性が求められる職が多いが、そうしたものほど、非正規率が高い」と述べ「国として、財源の手当ても含め、正規雇用への責任を果たすべきだ」と求めました。
男女賃金格差正す仕組みを
企業に是正計画を義務化せよ
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非正規公務員の4人に3人が女性という現状で、間接的な男女賃金差別が深刻です。
宮本氏は、省庁ごとの男女賃金格差(グラフ)を示し、女性職員の多い省庁ほど格差が大きいと指摘。併せて民間企業についても、共産党が提案してきた男女賃金格差の公表が始まったとして、次のように迫りました。
宮本 経団連役員企業で女性の賃金が4割、5割のところも少なくない。しかも男女の賃金格差の要因を説明しない企業も多数。対象企業拡大とあわせ、男女賃金格差の要因の分析、格差是正の計画を持つことを義務づけるべきではないか。
首相 開示企業の対象拡大を検討し、対象企業に男女賃金格差の要因分析や、改善に向けたアドバイスなどのコンサルティングを実施している。
宮本氏は、法的枠組みを作って、賃金格差是正そのものを進める実効ある仕組みをつくるべきだと求めました。
暮らしの持続可能性こそ
社会保障 給付削減と負担増
社会保障もコストカットの対象にされてきました。そのため、介護・障害福祉・医療・保育の人手不足が深刻です。
介護職の賃上げ額は武見敬三厚生労働相が「月6000円程度」としています。宮本氏は、介護職の賃金が全産業平均より月7万円も低いことへの首相の認識をただしました。
宮本 公務員初任給は1万2000円上げる。介護職はなぜ半分なのか。賃金を全産業平均並みに引き上げる必要がある。
首相 大変重要な課題だ。生産性向上を通じ必要な処遇改善を検討したい。
宮本 全産業並みに引き上げると答えないのは極めて残念。
物価高騰で事業者の経営悪化は深刻です。ところが、介護や障害者福祉の報酬改定は3年に1回、診療報酬改定は2年に1回。
宮本氏は、特養ホームの6割が赤字で苦しんでいる実態を示しながら、「物価や賃金動向をふまえ、毎年改定で報酬を引き上げるべきだ」と迫りました。首相は「将来に向けて考えていくべきだ」と先送りしました。
岸田首相は、少子化対策財源として、医療・介護などの歳出カットを名指ししています。
宮本氏は、年金の可処分所得が大きく減る中(グラフ)、政府が年末までに介護保険利用料の2割負担の対象を増やそうとしていることを指摘。「必要なサービスを我慢する人が増える。やめるべきだ」と主張しました。
宮本氏は、昨年10月から75歳以上の医療費窓口負担を2倍化したことで、高齢者の受診抑制を招いたことを厚労省の資料から暴露しました。
宮本 年金が200万円の人は「余裕があるから」と医療費窓口負担を2倍にした。余裕がないことは明白だ。
首相 制度の持続可能性の維持が大切だ。
宮本 さすがに余裕があるとは言えない。暮らしの持続可能性こそ首相は考えるべきだ。
宮本氏は「社会保障のコストカットは転換すべきだ。年金は『増える年金』にし、介護保険は利用料を引き上げるのでなく国庫負担を引き上げるべきだ」と強調しました。
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