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2023年10月25日(水)

国立大学法改悪案

政府関与の新最高意思決定機関 設置狙う

学問に新たな介入

 前国会での日本学術会議法改悪の画策に続き、岸田文雄政権が、国立大学への政治介入を強める法案提出を今国会で狙っています。一定規模以上の大学に新たな合議体の設置を義務づけ、同会議の委員選定を政府の承認事項にする構想です。同会議は事実上の最高意思決定機関として学内の予算配分や学長選考に強大な権限を持つことになります。


国立大学法人法改悪で強まる政府支配
中期目標・計画、予算編成など
現行 改悪後
役員会での審議を経て学長が決定 学長を含む合議体で審議・決定
理事・合議体委員の選定への政府関与
理事 合議体委員
理事は学長が任命し文科省に届け出 文科相の承認後、学長が任命
文科相が拒否することもある!?
役員会と合議体のメンバー構成
役員会 合議体
学長と理事。理事が7人の場合(東大など)、学外者を2人以上にする 学長のほか3人以上。合議体の半数以上を学外者にすることが「適当」

 政治権力などから学問の自由を守るため大学には教育・研究内容などを自律的に決める自治が保障されなければなりません。

 2004年の法人化を契機に、国立大学の自治の主要な担い手となってきた教授会の形骸化と学長への権限集中が政府主導で進められたものの、現在も教育・研究に関することは各学部の代表らが参加する「教育研究評議会」に諮られ、最終的に学長と理事で構成する「役員会」の議論を経なければ決められません。理事の任命に政府は関与しません。

 岸田政権は今国会で国立大学法人法を改悪し、文部科学省が指定する大規模大学に新たな合議体の設置を義務づける計画です。合議体の委員は学長のほか3人以上。委員の半数以上を大学外の人物とすることが「適当」としています。委員は文科相の承認を得て学長が任命するとしており、大学の人選を政府が拒むことも可能な仕組みです。

 現在役員会が持つ教育・研究方針、経営方針、予算編成などに関する審議権と、学長の最終決定権は合議体に移されます。合議体は学長選考にも意見表明の権限が与えられます。

 岸田政権は前国会に、学術会議の会員選考に政府が関与できるようにする法案提出をもくろみ、反対世論の高まりから見送った経緯があります。今回の国大法改悪案は、学術研究の中心である大学の最高意思決定機関の委員選定に政府が直接関与し、政府の息のかかった少数の人物による大学支配に道を開くものです。国大法改悪を学術会議法改悪へとつなげる思惑も透けます。

 高等教育論が専門の北海道大学の光本滋准教授は、各学部の独立性を基盤とする教育研究評議会の影響を排除し、政府が「成長戦略」で位置づける研究分野への「選択と集中」を進めることを狙った改悪だと指摘。「合議体が大学を支配するようになれば、自治を基本とする大学とは言えなくなる」と語ります。


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