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2023年10月24日(火)

大学・研究機関での男女共同参画

国の支援求め学術会議提言

 大学や研究機関における男女共同参画の取り組みが停滞している課題について、日本学術会議は大規模なアンケート調査を実施。約300の大学と1万人の研究者の回答を踏まえ、大学が女性の採用を加速できるよう、国の積極的支援を求める提言(8月末)をまとめました。(田中佐知子)


 調査によると、大学の意思決定に関わる職位の女性比率は、学長10%、副学長13%、教授14%です。女性教員を増やす積極的改善措置(ポジティブ・アクション=PA)を採用時に導入している大学は38%、昇進時で18%と低下。どの学問分野でも職位が上がるほど女性比率は下がり、特に助教から准教授への昇任段階で著しく落ちています。

 一方、若手の男性研究者には、女性比率の目標値設定に対する不満が見られると指摘。公平感を担保しつつ女性採用を加速するため、「定員外の特別枠」を用意するといった大学の取り組みを、国が積極的に支援するよう求めています。

ハラスメント被害

 ハラスメント問題では、全大学が防止方針の周知などの対策を取っているものの、被害経験があると回答した女性は56%で、男性30%の約2倍。大学のハラスメント相談を利用した割合は女性25%、男性20%と低く、利用しなかった主な理由に「真剣に対応してもらえないと思った」「報復が怖い」などが挙げられています。

 提言は、第三者機関の活用を含め、二次被害の心配なく利用できる相談体制の必要性を強調。全教職員へのハラスメント研修受講の義務化、学生への防止教育のカリキュラム化なども求めています。

 子育て世代の研究者の多くが、育児期の処遇に不満を持っていることも明らかになりました。「職場が“仕事と家庭の調和”に理解がない」と考える女性は36%(男性21%)で、30~40歳代の女性では41~42%と高くなります。「家庭状況のため責任あるポストにつけない」と感じたことがある女性は45%(同18%)。研究を中断したことがある女性は38%(同14%)で、中断の理由に「育児」をあげた女性は25%(同1%)と、男女差が見られます。

 提言は、研究・人事評価制度が、育児や介護を適正に組みこんでいるかを検証し整備するよう、国と大学に求めています。

若手雇用安定化を

 さらに、多様な属性を持つ研究者のための環境整備の課題に言及。性的指向・性自認に基づく差別禁止やLGBT支援に取り組む大学は38%にとどまっており、よりどころとなる法律を国が制定する必要性を訴えています。大学の若手研究者への支援策が「任期付きポストの増加」を中心に進められ、35歳未満の6~7割が任期付き雇用で、女性の方が多いと強調。若手の雇用を安定化させる国の施策が必要だとしています。

 提言は最後に、研究環境にある根強い無意識の差別や偏見を可視化する必要性を強調し、人事や研究評価に関わる委員会組織の男女格差の是正などを求めています。


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