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2023年10月22日(日)

主張

辺野古代執行訴訟

新基地反対の民意こそ「公益」

 沖縄県名護市辺野古の米軍新基地建設を巡り、大浦湾の埋め立て予定海域にある軟弱地盤の改良工事に必要な設計変更の承認を県に代わって国が行う「代執行」に向けた裁判で、県が国の請求の棄却を求める答弁書を提出しました。答弁書は新基地建設で埋め立て反対が多数になった県民投票などが示すように民意は明確であり、代執行を「住民の意思を無視して行うことは到底許されるべきではない」と強調しています。岸田文雄政権は県民の思いに背く代執行手続きをやめ、問題解決に向け県が求める対話に応じるべきです。

訴えの要件満たさず

 代執行手続きは、地方自治法で規定され、▽都道府県の事務が法令などに違反▽他の方法で是正が困難▽法令違反などを放置することにより著しく公益を害することが明らか―の全ての要件に該当することが必要とされます。その場合、国(所管大臣)は知事に勧告ができ、知事が応じなければ指示ができ、さらに応じなければ高裁に訴えることができるとしています。高裁が国の請求を認め、知事が従わないと、国は代執行ができるとされます。

 大浦湾の軟弱地盤改良工事に関する設計変更について玉城デニー知事は承認に応じていません。国は代執行に向け、9月に勧告、指示を間髪入れず行い、今月5日に福岡高裁那覇支部に提訴しました。これを受け、県は18日に答弁書を同支部に提出しました。

 国の訴状は、知事が承認に応じないことが公有水面埋立法の規定違反である理由として設計変更の承認を巡り県が国を訴えた裁判の最高裁判決(9月4日)を挙げます。しかし答弁書は国が同法の違反を具体的に立証しておらず、最高裁判決もそうした認定を一切していないと指摘しています。

 国はまた、代執行手続き以外の方法での是正は困難としています。これに対し答弁書は、代執行手続きはやむを得ない最終手段であって、対話はあらゆる紛争の基本的な解決方法であるにもかかわらず、国はその努力を怠ってきたと批判しています。県は、国からの設計変更の承認申請前から今日まで繰り返し問題解決に向けた対話を求めてきました。国はそうした県の要望を無視し、まったく対話に応じませんでした。

 国は、「普天間飛行場の危険性の除去」を「公益」とします。答弁書は、新基地建設は今後、最低でも12年かかり、さらに長期化も予想されており、その間、普天間基地は固定化されることになるとして、国が主張する「危険性の除去」という「公益」の侵害は極めて抽象的だと指摘しています。

 国はまた「日米間の信頼関係や同盟関係」を「公益」としますが、辺野古新基地は両国の政治的合意にとどまり、条約上の義務ではありません。普天間基地返還の日米合意から27年たった今も新基地建設は長期間を要するとされ、合意の履行は既に破綻しています。

棄却されるのが当然

 答弁書は、憲法の地方自治の本旨などに照らせば県民の明確な民意を「公益」として考慮すべきだとし、「(設計変更を)承認しないことが、むしろ公益にかなうことは明白」だと訴えています。代執行手続きの要件をどれも満たさない国の請求は当然、棄却されなければなりません。


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