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2023年10月11日(水)

主張

大阪IR実施協定

世界一危険なカジノ止めよう

 大阪市此花区の人工島・夢洲(ゆめしま)に計画されているIR(カジノを中核とする統合型リゾート)で、大阪府・市と事業者の大阪IR株式会社(米カジノ大手・MGM日本法人とオリックスなどが出資)がカジノ開業までの工程などを定める実施協定を結びました。2030年秋ごろの開業を掲げますが、ほころびは隠せず、大阪カジノ計画の破綻が色濃くなっています。

計画の破綻が色濃くなる

 実施協定の最大の問題は、事業者側が違約金なしで一方的に事業から撤退できる「解除権」を3年間延長して26年9月まで認めたことです。事業者側は、夢洲の地盤沈下対策など事業前提条件がクリアされておらず「最終的な事業実施判断を行うことができる状況にない」と主張し、いつでも逃げ出せる条件を確保しました。府・市は「相応の合理性がある」とこれを追認しました。

 橋下徹府知事時代にカジノ誘致を表明した当時、大阪には日本進出をもくろむ米国などのカジノ企業が参入をめざして押し寄せました。ところがその後の世界のカジノをめぐる環境の激変で、実際に大阪のカジノ計画に手を挙げたのはMGM・オリックス連合のみとなりました。

 選択肢がないもとで、府・市はMGM・オリックス連合をなんとか引きとめるために、最大限の優遇措置をとらなければならない関係に陥っています。

 それを象徴するのが、「IRには税金を1円たりともいれない」というそれまでの説明を覆し、事業者側の求めで、土壌汚染などの土地対策に大阪市が788億円もの公費負担を決めたことです。

 本紙日曜版が昨年秋にスクープし、日本共産党などが追及している、IR用地のずさんな土地鑑定と安すぎる地代の問題も、カジノ企業に対する露骨な優遇に他なりません。

 日本のカジノ解禁の議論は、世界の富裕層、とりわけ中国のVIP客を呼び込み、巨額の収益を上げるという前提で進みました。ところが、中国国内の賭博規制強化などでカジノ市場から中国人VIP客は消えました。マカオやシンガポールなどアジアの巨大カジノは、その対応に追われています。

 大阪カジノははっきりと日本人客を主要な収益源とするものになりました。スロットマシンなど電子賭博機を、世界の巨大カジノの数倍にあたる6400台も詰め込むというカジノ場の構成に、それがあらわれています。

 計画を審査した国の審査委員会では「最も依存性の強い電子賭博機を多数並べているが安全対策はあるのか」との指摘が出たものの、議論は深まらず、岸田文雄政権は安易に計画を認定しました。

 パチンコになじんだ日本人ギャンブラーを呼び込むための巨大スロット場―。日本人客をターゲットにする大阪カジノは、ギャンブル依存症を広げる世界一危険な賭博場になりかねません。

世論と運動を大きく広げ

 大阪IRは、日本初の民間賭博解禁となります。大阪府ではカジノの賛否を決める住民投票を求める署名が20万人という規模で集まりました。大阪地裁ではIR差し止め訴訟が係争中です。

 暴走を止め、日本のカジノ汚染を食い止める世論と運動を大きく広げるときです。


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