2023年9月30日(土)
政治考 第2次岸田再改造内閣
「政治とカネ」噴出
企業・団体献金と政党助成金「二重取り」
第2次岸田再改造内閣が発足しましたが、政権浮揚にならないばかりか、閣僚や自民党執行部の「政治とカネ」の問題が噴出しています。多くは、企業・団体献金と政党助成金(税金)を二重取りする“財布”となっている、みずからが支部長を務める政党支部をめぐってのもの。その政治資金収支報告書と、政党交付金使途等報告書(いずれも2021年分)を点検してみると―。(藤沢忠明)
公選法違反の献金
関連政治団体の不明朗な支出で2014年に経済産業相を辞任した小渕優子選対委員長(衆院群馬5区)は、「ドリル優子」などという“異名”を持ちますが、小渕氏が支部長の政党支部は、元秘書が取締役を務める会社に、事務所家賃を支出していたことがわかったほか、21年10月の総選挙中に国の公共事業を請け負っていた業者から献金を受け取っていたことも判明しました。
公職選挙法は、国と契約関係にある業者が、国政選挙に関して寄付することを禁じており、同様の献金を政党支部で受け取っていた閣僚・役員は、萩生田光一政調会長(衆院東京24区)、高市早苗経済安保相(衆院奈良2区)、西村康稔経済産業相(衆院兵庫9区)、宮下一郎農水相(衆院長野5区)と広がる一方です。(上表)
岸田文雄首相(衆院広島1区)の政党支部は、ほかの自民党支部からの寄付10万円を記載していませんでした。
松村祥史国家公安委員長(参院熊本)の支部は、入札に関する不正などで国や県から指名停止措置を受けていた業者から献金を受け取っていたほか、兄が代表取締役を務める建設会社に事務所賃料を払っていました。加藤鮎子こども政策担当相も、関係政治団体が母親に事務所賃料を支出。政治資金の身内への“還流”です。
いわば税金私物化
宮下一郎農林水産相 | 1500万円 |
森山裕総務会長 | 1500万円 |
盛山正仁文部科学相 | 1117万810円 |
高木毅国対委員長 | 1100万円 |
高市早苗経済安保相 | 1076万3391円 |
小渕優子選対委員長 | 1000万円 |
西銘恒三郎幹事長代理 | 1000万円 |
上川陽子外相 | 996万9599円 |
稲田朋美幹事長代理 | 900万円 |
林幹雄経理局長 | 895万円 |
新藤義孝経済再生相 | 810万円 |
加藤鮎子こども担当相 | 800万円 |
西村康稔経済産業相 | 783万3355円 |
鈴木淳司総務相 | 638万3524円 |
土屋品子復興相 | 598万2212円 |
岸田文雄首相 | 500万円 |
伊藤信太郎環境相 | 500万円 |
《注》政党交付金使途等報告書(2021年分)で作成 |
自民党は、国民の税金である政党助成金を21年、約169億4700万円受け取り、所属国会議員の各支部に衆院議員は2720万円、参院議員は1520万円交付しています。
その使い道を各支部が報告している「政党交付金使途等報告書」によると、同年10月の総選挙公示日前後に「選挙対策費」として、宮下農水相、森山裕総務会長(衆院鹿児島4区)の1500万円を筆頭に多額のカネを議員本人に寄付している例が目立ちます。(右上表)
国民の税金が政党支部を経由して政治家個人に渡った後、どう使われたか検証のしようがありません。いわば税金の“私物化”です。
そればかりか、使い残した政党助成金を国庫に返納せず、「基金」としてためこんでいる例も。土屋品子復興相(衆院埼玉13区)は、前年より750万円も増やして、4111万7548円もためこんでいます。
庶民は重税、物価高に苦しんでいるのに、「税金返せ」と言いたくなります。
党員ゼロ政党支部
政党助成金は、企業・団体献金をなくすということで導入されたにもかかわらず、政党支部は、企業・団体献金の受け皿になっています。
その額は、麻生太郎副総裁(衆院福岡8区)5766万円、茂木敏充幹事長(衆院栃木5区)4976万円、萩生田政調会長4631万円、森山総務会長3978万円、河野太郎デジタル相(衆院神奈川15区)3578万円―。政党助成金との“二重取り”が続いているのです。
しかも、「政党支部」といいながら、「個人の党費・会費」がゼロと報告しているのは、小泉龍司法相(衆院埼玉11区)、伊藤信太郎環境・原子力防災相(衆院宮城4区)、河野デジタル相、土屋復興相、新藤義孝経済再生相(衆院埼玉2区)、自見英子地方創生・沖縄北方相(参院比例)と6人もいます。
実態のない政党支部を、企業・団体献金受け取りの財布にしているのです。
日本共産党 金権腐敗根絶へ法案
日本共産党国会議員団は、昨年5月23日、政治をカネの力でゆがめる企業・団体献金、形を変えた企業・団体献金であるパーティー券購入の全面禁止を求める法案を提出しました。
同年2月4日には、思想信条の自由に反する政党助成金の廃止法案を提出しています。
企業・団体献金の全面禁止と政党助成制度の廃止を一体で行うことが、金権腐敗政治を根絶する道です。