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2023年9月28日(木)

解説

ヤマト解雇 事業縮小の理由不明確

個人事業主へ委託続くとインボイス増税の見通し

 「クロネコDM便」の仕分け作業に従事する50代のパート社員は仕事を掛け持ちしています。

 「夜勤は賃金が割り増しになるので、少しでも多く稼ぎたい事情を抱える人にとってヤマト運輸の『ベース』はありがたい職場になっています。シングルマザーも多く夜勤にきています。解雇の通告にショックを受けている人は大勢いるのではないでしょうか」

 ヤマト運輸は8月、雇用契約終了に伴う支援策をパート社員らに通知しました。(1)離職理由を「会社都合退職」とする(2)年休の残日数を会社が買い上げる(3)賃金3カ月分相当の慰労金を支払う(4)転職支援サイトを立ち上げる―という内容です。しかし前述の社員は不安を募らせています。

 「現在と同等の契約条件が保証されるわけではなく、移管先の日本郵便が面倒をみてくれるという話でもありません。そもそも解雇の理由が不明確で、理解できません。このまま働き続けたい」

 ヤマト運輸は、個人事業主・パート社員との契約を打ち切る理由について「(日本郵便と協業し)両社の経営資源を有効活用することで、顧客の利便性向上に資する輸送サービスの構築と事業成長を図る」ことだと主張します。しかし日本郵便への業務移管がなぜヤマト運輸の事業成長につながるのか、具体的な説明はありません。

 他方、約3万人の個人事業主に配達業務を委託したまま10月にインボイス制度が始まると、ヤマト運輸の消費税納税額は大きく増えるとみられます。個人事業主の多くは年間売上高が1千万円以下の免税事業者で、インボイス(適格請求書)を発行できず、ヤマト運輸が仕入れ税額控除を受けられなくなるためです。

 インボイス導入と今回の措置との関係について本紙が尋ねたところ、ヤマト運輸は「仕入れ税額控除のために個人事業主と契約すること、もしくは免税事業者であるという理由で契約解除(取引終了)を行うことは一切ありません」と強調。「ヤマトグループと日本郵政グループの協業とそれに伴う個人事業主との契約解除は、インボイス制度に関する対応を目的としたものではない」と主張しています。一方で、インボイス導入で消費税納税額が増える見通しについてはなにも回答しませんでした。

 建交労軽貨物ユニオンの高橋英晴執行委員長は「ヤマト運輸が契約解除や解雇に追い込もうとしている個人事業主とパート社員の多くは、高齢者、障害者、シングルマザーなどの社会的弱者です。日本を代表する大企業であるヤマト運輸が、会社都合の経営判断で社会的弱者を一方的に切り捨てていいのか。少なくとも責任を持って次の就労先の道筋をつけてあげるべきではないか。大企業の社会的責任が問われる大問題です」と述べています。(杉本恒如)

インボイス増税の仕掛け

 現在、ヤマト運輸が個人事業主に配達サービスの対価として支払う委託料は消費税分を含むものとされています。売上高1千万円以下の個人事業主は消費税納税を免除されていますが、配達に使うバイクやガソリンなどの経費に含まれる消費税については自己負担しています。委託料はこれらの事情を勘案した水準になっていると考えられます。

 他方、ヤマト運輸はチラシや小荷物の配達を依頼してきた顧客企業から消費税分を含めた配達料を受け取り、税務署に消費税を納付します。このとき、配達サービスの仕入れの際に個人事業主に払った消費税分の控除(仕入れ税額控除)を受けられます。(図)

 ところが、10月にインボイス制度が始まると、個人事業主が消費税納税義務を負う課税事業者にならなければインボイスを発行できず、ヤマト運輸は仕入れ税額控除を受けられなくなります。このためヤマト運輸の消費税納税額は増えることが予想されます。

 個人事業主が課税事業者になればヤマト運輸は仕入れ税額控除を受けられますが、その場合、個人事業主の消費税負担が増えます。いずれにしても消費税の大増税となります。

図


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