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2023年9月28日(木)

主張

安全な中絶は権利

教育と法律の遅れをただそう

 きょうは国際セーフ・アボーション・デー(安全な妊娠中絶のための権利の日)です。1990年9月28日に中南米の女性たちが始めた行動が世界に広がり、各国で「私の体のことは私が決める」などと声を上げる行動が取り組まれます。日本の中絶をめぐる状況は国際水準から大きく遅れています。法律や制度、社会の認識を問い直す日にすることが大切です。

決定権が女性にない

 リプロダクティブ・ヘルス&ライツ(性と生殖に関する健康と権利)は、1990年代半ばに確立されました。95年の第4回世界女性会議の北京行動綱領は「すべてのカップルと個人が自分たちの子どもの数、出産間隔、ならびに出産する時を責任をもって自由に決定でき、そのための情報と手段を得ることができるという基本的権利」を認めると明記しました。

 一部に逆流がありながらも、世界は妊娠・出産・中絶に関する女性の自己決定権を尊重し、中絶を合法化する方向に動いています。

 日本では、中絶手術を合法的に受ける道は戦後すぐの48年からありました。しかし、実際の権利保障は著しく遅れたままです。

 まず教育です。学習指導要領には「人の受精や妊娠の過程は取り扱わない」とする「はどめ規定」があり、公教育で性交や避妊を教える妨げとなっています。予期せぬ妊娠を減らすためにも、科学と人権の視点に立ち、自分も他者も尊重しながら適切に行動する力を身につける世界標準の性教育の推進が急がれます。

 日本では女性に決定権がなく失敗率の高いコンドームが避妊法の主流になっていることも問題です。緊急避妊薬も諸外国のように薬局で買えず、入手困難です。

 中絶方法も日本は遅れています。80カ国以上で普及している経口中絶薬は、ようやく今年4月に承認されました。しかし、費用は約10万円と高額に設定され、現時点では入院施設がある限られた医療機関でしか使えません。

 法律も不備です。刑法には「妊娠中の女子が薬物を用い、又はその他の方法により、堕胎したときは、1年以下の懲役に処する」という自己堕胎罪の規定があります。女性が自分の意思で中絶すれば犯罪とされ、母体保護法の指定医師のもとで配偶者の同意があった場合、合法的に中絶が可能となります。女性が無権利で、子どもは家長=男性のものであった明治時代の法律が今も生きているのです。堕胎罪の存在が中絶にスティグマ(負の烙印〈らくいん〉)を与え、女性が罪の意識で苦しめられる大きな要因になっています。

 中絶する人にはやむにやまれぬ事情があります。妊娠の継続・出産を強制する権利は誰にもありません。中絶を選んだ人を責めるのではなく、心身の適切なケアと、望まない妊娠を防ぐための支援の充実こそ必要です。

堕胎罪・同意要件廃止を

 日本共産党は6月、刑法の堕胎罪を廃止し、母体保護法で中絶に配偶者の同意を必要とする要件を廃止する法案を参院に提出しました。中絶を認める指定医制度の見直し、高過ぎる中絶費用への保険適用なども検討事項に盛り込んでいます。

 女性の自己決定権の尊重と中絶の非犯罪化の徹底へ、力を合わせましょう。


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