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2023年9月19日(火)

『ビッグイシュー日本版』20周年

ホームレスの人の仕事つくる

連日 街頭で販売しています

 ホームレスの人たちに仕事をつくり、生活再建を支援する「ビッグイシュー」。同社が発行する『ビッグイシュー日本版』は9月、創刊20周年を迎えました。9月15日で463号となり、累計約1000万冊を販売。「伴走型」の支援事業とともに、“市民メディア”として情報発信をつづけています。(芦川章子)


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(写真)『ビッグイシュー日本版』を販売するヤマノベさん=東京・高田馬場駅前

 東京・高田馬場駅前。「ビッグイシュー」販売員のヤマノベさん(57)は、雨天をのぞき、ほぼ連日、ここで販売を続けています。赤いキャップ、赤いベストはユニホームです。「接客は好きだね」とほほ笑みます。販売者8年目です。

 20代から契約社員や日雇いなどで働いてきたヤマノベさん。40代後半、仕事と家を失い路上へ。人づてに知ったビッグイシューに自ら連絡しました。支援団体の協力をへて、今は賃貸アパートで一人暮らしです。

「励まされる」

 「暑いから気を付けてね」と声をかけてきた女性(78)は、毎号購入しているといいます。ヤマノベさんの姿に「いつも励まされています」。

 「ビッグイシュー」は1991年、英国ロンドンで始まりました。

 販売者は初めにまず、雑誌10冊を無料で受けとります。その売り上げを元手に、一冊220円で雑誌を仕入れ、450円で販売します。差額の230円は販売者の収入になります。

 ビッグイシュー日本東京事務所長の佐野未来さんは「今も日々、試行錯誤です」と語ります。創刊時からのメンバーです。

 創刊前、「日本では100%失敗する」といわれた試みは、赤字を乗り越え、累計で約15億6000万円の収入を販売者に提供してきました。20年間で2031人が販売者として登録。206人が雑誌の販売のみで路上生活を脱し、次の仕事へと“卒業”していきました。

 雑誌の内容にはこだわりつづけています。

 インタビューには、国内外の著名人がたびたび登場します。

 テーマは気候変動、原発などの社会問題から、文化、芸能と多彩です。販売者が読者の悩みに答える「ホームレス人生相談」は人気コーナーです。

 「販売者が自信をもって売れる」「読後に“希望をもって”社会にかかわれる」雑誌が編集方針の柱です。

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(写真)ビッグイシュー日本東京事務所長の佐野未来さん

尊厳をもって

 2021年の日本の相対的貧困率は15・4%。主要7カ国(G7)の中で最悪です。

 佐野さんは「ホームレスの人の数は政府発表では減っていますが、困窮する人は減っていない」と実感します。つまずいた人が再起するための「公的セーフティーネットがあまりにも弱い」とも。

 08年のリーマンショック以降、20代~40代の販売者が増えたといいます。「若者がチャレンジできない、萎縮している。社会にとって大きな損失です」

 他方、女性首長の誕生など、政治での女性や若者の活躍は「希望」だといいます。

 これからの20年―。「路上からの視点」で社会を捉え、調べ、発信する。市民を巻き込んだ課題解決事業として発展させたいといいます。

 「現場で、困難な人たちと一緒に働くから見えること、届けられる言葉がある。誰もが尊厳をもって、安心して生きられる社会をつくっていきたい」

 相対的貧困率 その国や地域の水準とくらべ、大多数より貧しい状態。世帯の所得が、その国の等価可処分所得の中央値の半分(貧困ライン)に満たない状態。日本の貧困ラインは127万円(一人世帯)です。


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