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2023年9月19日(火)

主張

安保法制強行8年

3文書とともに廃止が必要だ

 2015年9月19日に当時の安倍晋三政権が安保法制=戦争法の成立を強行してから、きょうで8年です。同法制は、歴代政府が憲法違反としてきた集団的自衛権の行使を可能にするなど、戦後の安保政策を百八十度転換させました。海外で米国が戦争を始めた際、自衛隊が米軍を支援するため戦闘に参加できるようにするのが大きな狙いの一つでした。岸田文雄政権が昨年12月に決定した安保3文書で相手国領内を直接たたける敵基地攻撃能力の保有を打ち出したことにより、同法制の危険性がいよいよ現実のものになっています。

米の戦争で敵基地攻撃

 安保3文書の一つ、「国家安全保障戦略」は、安保法制について次のように述べています。「平和安全法制(=安保法制)の制定等により、安全保障上の事態に切れ目なく対応できる枠組みを整えた」。その上で「(同戦略に基づく)指針と施策は、その枠組みに基づき、…戦後のわが国の安全保障政策を実践面から大きく転換するものである」と強調しています。

 安保法制は、日本と密接な関係にある他国への武力攻撃が発生したことにより日本の存立が脅かされる危険がある場合(存立危機事態)に、他国に対する第三国からの武力攻撃を排除するため、自衛隊は武力の行使=集団的自衛権の行使ができると定めています。政府は「日本と密接な関係にある他国」の例に米国を挙げています。米国が第三国と始めた戦争で攻撃を受け、政府が「存立危機事態」と認定すれば、発動対象です。

 政府は安保法制の国会審議で、同法制に基づく集団的自衛権の行使として敵基地攻撃をすることは「法理上はあり得る」としていました。一方で、当時は敵基地攻撃能力の保有を否定していたことから「実際には想定はしていない」と明言していました(15年6月1日、衆院安保法制特別委員会、安倍首相)。そのため、集団的自衛権の行使として相手国領域で武力行使する例としては「ホルムズ海峡における機雷掃海しか念頭にはない」と述べていました(同)。

 ところが、岸田政権は戦後初めて敵基地攻撃能力の保有に乗り出しました。岸田首相は「反撃能力(敵基地攻撃能力)は、…わが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生した場合など、武力行使の3要件を満たす場合に行使し得る」(今年4月6日、衆院本会議)とし、集団的自衛権の行使として敵基地攻撃が可能だと公言しています。前述の国家安全保障戦略が指摘している「戦後安保政策の実践面からの大転換」とはこのことに他なりません。

日本に戦火を呼び込む

 政府は「集団的自衛権を行使した後、…他国からわが国に対する武力攻撃が発生し、わが国に被害を及ぼす場合もあり得る」(2月6日、衆院予算委員会、浜田靖一防衛相=当時)と述べ、相手国から報復攻撃を受ける可能性を事実上認めています。その際、「大規模な被害が生ずる可能性も完全に否定できるものではない」とも答弁しています(同)。米国が海外で始めた戦争で自衛隊が安保法制に基づき米軍とともに敵基地攻撃を行えば、日本に戦火を呼び込むことになるのは明白です。

 安保法制とともに敵基地攻撃能力保有を明記した安保3文書を廃止することは切実な課題です。


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