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2023年9月10日(日)

主張

電動キックボード

規制を強めることこそ必要だ

 電動キックボードの規制を大幅に緩和した改定道路交通法が7月から施行されました。従来の道交法では運転免許証が必要でしたが、最高時速20キロ以下などの車体を対象に免許不要にしました。低速時は歩道走行もできます。ヘルメット着用も努力義務へと緩和されました。電動キックボードの普及が進む中で事故や法令違反が増加しており、交通の安全を確保するためには、規制を強化する見直しが必要となっています。

懸念された問題が現実に

 業界最大手ループは東京23区、横浜市、大阪市、京都市などに現在約3000ある電動キックボードの貸し出し拠点を2025年までに1万に増やす目標です。他の事業者も都市部での拠点整備を急いでいます。外国人旅行者を念頭に観光客の呼び込みを目的にした観光地でのシェアリング拠点設置の動きも広がっています。

 懸念されるのは交通違反や事故の増加です。

 道交法改定をめぐる政府の検討会や国会の審議で緩和の危険性は繰り返し指摘されていました。

 20年から今年1月までに電動キックボードに関わる人身事故は76件起きています。20年は4件でしたが、22年は41件と約10倍にもなりました。同年9月、警察庁は徹底取り締まりを指示しましたが、歯止めはかかりません。同年9月には初の死亡事故も発生しています。

 警察庁は今月1日、規制緩和後の今年7月の1カ月間の電動キックボードについての事故・交通違反の件数を発表しました。人身事故7件、違反406件でした。双方とも年換算すると昨年の2倍を超すペースです。交通違反の46%は信号無視でした。歩道への進入など「通行区分違反」は37%です。酒気帯び運転もありました。

 規制緩和に対する不安の声に対し、事業者は▽利用者に事前に走行ルールのテストで満点を取ることを条件とする▽警察と連携し重大な違反をした利用者へのサービス提供停止などの措置をとるとしましたが、不十分さは否定できません。

 従来、運転免許を持っている人は自転車走行の時も安全で法規制を順守した運転傾向が高いことが指摘されてきました。免許試験合格のためルールやマナーの学習、免許更新時の講習などで交通安全教育が義務付けられているためと考えられています。電動キックボードでの違反増加は免許不要にしたことと無縁と言えません。

 警察庁は、事故・違反件数が増加傾向にある自転車の交通違反について確実にペナルティーを科すことを理由に反則金制度の対象にする検討を始めました。この対応については議論がありますが、交通違反が増えていた電動キックボードを免許不要としペナルティーを科す規制を弱めたことの是非が問われます。

先行した他国の教訓学び

 電動キックボードの普及が先行していた欧米では問題が深刻化しており、免許を必要としたり、ヘルメットの着用義務を拡大したりする動きが出ています。この教訓に日本は学ぶべきです。

 日本の電動キックボードの規制緩和は、財界が主導する「成長戦略」の一環です。関係企業のもうけのために安全を置き去りにする交通政策の転換が必要です。


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