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2023年9月10日(日)

ホーユー 給食停止 生徒ら不安

教職員「長期間なら限界」

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(写真)各地で給食の提供を停止している「ホーユー」本社=7日午前、広島市中区

 全国で給食調理業務などを展開していた「ホーユー」(広島市中区)が、各地の給食提供を停止している問題。学校関係者や保護者からは、不安や怒りの声が上がっています。(井上拓大、嘉藤敬佑)

 大阪府立特別支援学校の教員(44)は1日の始業式終了後、「月曜日(4日)から給食が提供できなくなる。ホーユーの調理員さんらが、雇用上のトラブルで調理を継続できない状態になった」と伝えられました。

 「突然の事態に子どもたちはもちろんのこと、保護者、教職員は、戸惑いや先の見通しが立たないことによる大きな不安を抱いている」と語ります。

 現在は、給食の代わりに弁当が提供されています。11日から中学校給食として提供されている弁当が配られる予定ですが、多くの不安が残ります。ふりかけの付いたご飯を食べることができない子どもや、大きな食材をのみ込むことが困難な子どもたちも多数いるからです。

 教職員らがキッチンバサミで弁当のおかずを小さく切り、給食の具材と同じ大きさにしたり、魚の骨を取り除いたりするなど細心の配慮を払って対応しています。かなりの時間をさかざるを得ず、現場は必死です。

 「短期間なら教職員が力を合わせて対応するが、長期間に及ぶと限界を迎える」

学校関係者 自校調理に戻して

“民間任せ原因”

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(写真)府立摂津支援学校で、4日から提供されている市販弁当の写真(保護者提供)

 ホーユーが突然、給食の提供を停止し、対応に追われている大阪府立特別支援学校の教員(44)は、こう話します。「さまざまな食物アレルギーのある子どもたちがいますが、アレルギー対応は小麦を除去した弁当のみです。日替わりメニューと違い毎日同じものを食べることになり、残念に感じる子も出ると思います」

弁当に不安

 状況の変化が苦手な子どもたちが多いと指摘。「給食を毎日期待している子もいます。突然のメニュー変更に、驚きや不安を感じている子もいます」と語ります。

 知的障害と自閉症のある息子(11)が大阪府立摂津支援学校に通う母親(48)=大阪府吹田市=は「11日から始まる弁当のメニューはもらいましたが、写真などは一切なく、普通の弁当と何が違うのかなど詳細はわかりません。この弁当が継続されるかどうかも未定です」と不安げに語ります。

 息子は転んで前歯を折り、大きな食材をかみ切ることができません。「食材の大きさが適切かどうか、魚の骨が抜いてあるのかどうかなど、注意が必要なことがあります。そうした配慮が弁当でできるのか不安です。理想としては、業者に任せる弁当ではなく、ちゃんと学校で調理をしてほしい」

 大阪府内の特別支援学校関係者によると、以前は府立の特別支援学校では、府が調理員を直接雇用し、直営自校調理方式で給食を調理・提供していました。この関係者は、府が給食調理業務について民間委託化する方針を掲げ、これまでの方針を百八十度転換したことに問題があるといいます。

 「特別支援学校では調理にきめ細かい対応が必要になる。民間企業でもきちんとした対応が必要。よくない会社は入り込まないようにしないといけない」と語ります。

 前出の府立特別支援学校の教員は、調理業務の民間委託はやめて、以前のように府直営の自校給食調理に戻すべきだと強調します。「一日も早く、安全で安心な給食、栄養バランスの整った給食を公教育の責任として、安定的に当たり前のように提供してもらいたいです」

 「隠れ教育費」研究室・チーフディレクターの栁澤靖明さんは「学校で給食を実施できなくなるのは大きな問題だ。本来は学校の設置者が提供すべきもの。設置者が直接給食を提供していれば、今回のような問題は発生しない」と指摘します。

負債16億円

 帝国データバンクによると、ホーユーは1日から事業の一部を停止。6日には、自己破産の申請を検討していることが明らかになっています。帝国データは、ホーユーが自己破産申請を検討するに至った理由として、同業者との競合による受注価格の低下のほか、食堂の売り上げが減少したためと分析しています。負債額は、2022年11月期末時点で16億7000万円。


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