しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

赤旗電子版の購読はこちら 赤旗電子版の購読はこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加

2023年9月5日(火)

主張

大企業の内部留保

利益ため込まず賃上げに回せ

 企業の決算を集計した2022年度の法人企業統計で、資本金10億円以上の大企業の内部留保が過去最高の511・4兆円となりました。コロナ禍の影響を受けていた経済活動の再開や、円安による為替差益で利益を増やしています。内部留保は前年度比5・6%増え、27兆円も積み増しました。賃上げへの活用が急務です。

配当と役員報酬は大幅増

 前年度と比べると、株主への配当金が8・5%増、役員報酬が8・4%増と大幅に伸びました。労働者1人当たりの賃金は3・5%増でした。4%近い物価上昇に追いつきません。

 アベノミクスがスタートした12年度と比べれば、格差はさらに深刻です。大企業の内部留保は178兆円増え、配当金は13・5兆円から29・7兆円と倍増しました。

 役員1人当たりの報酬が1710・7万円から2250・3万円に31・5%増えたのに対し、労働者1人当たりの賃金は年収で560・2万円から611・3万円に9・1%伸びただけです。

 物価上昇の影響を除いた実質賃金はこの10年間で年収にして24万円も減っています。

 格差と貧困の拡大は個人消費の低迷という日本経済の最大の弱点を生み出しています。賃金を引き上げ、物やサービスの生産・販売など実体を伴う経済を活性化することが重要です。大企業が利益を増やしても、内部にため込んでいたのでは、経済は循環しません。

 大企業は内部留保で金融投資を増やしています。収益構造の上でも大企業は金融への依存を強めています。

 法人企業統計では、金融・保険業以外の大企業が2000年代初めから本業以外の収益を伸ばしています。その中心は金融投資で得た利益です。製造業までが金融頼みになっていることで実体経済の活力が弱まっています。

 大企業の金融頼みは、アベノミクスによって促進されました。安倍晋三政権は法人税を連続して減税すると同時に「異次元の金融緩和」で金融市場に大量のマネーを供給し株価をつり上げました。

 異次元緩和は円安を加速し、輸出大企業に巨額の利益をもたらしました。その一方、輸入物価の上昇を招き、中小企業には耐え難い負担となっています。

 岸田文雄政権は「構造的賃上げ」を言いますが、大企業に賃上げを要請するだけで、内部留保を活用させる手だてをとりません。社会保険料の軽減など中小企業に直接届く支援には後ろ向きです。8月31日に開いた「新しい資本主義実現会議」で今後の最低賃金引き上げの目標を示したものの、時給1500円の実現は10年以上先の30年代半ばとされました。

時限課税で経済好循環を

 膨大な内部留保を賃上げに活用するには政治が役割を果たさなければなりません。

 日本共産党は内部留保への課税を提案しています。大企業の内部留保のうち12年以降に増えた分に5年間、時限的に10%課税し、これを財源に中小企業の賃上げを支援します。賃上げと国内の設備投資に回した分を課税対象から控除することで大企業の賃上げと国内設備投資も促します。

 大企業のもうけ最優先のゆがみを正し、政治の責任で経済の好循環をつくる具体的提案です。


pageup