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2023年9月3日(日)

主張

大阪・関西万博

理念を見失った開催は中止を

 2025年4~10月に大阪市の夢洲(ゆめしま)で開催が予定されている大阪・関西万博の準備の遅れが危機的状況です。海外パビリオンの建設工事が遅れ、開催に間に合わない可能性が濃くなっています。会場建設やインフラ整備の費用も膨張しています。日本共産党大阪府委員会は8月30日、大阪・関西万博の中止を求める声明を発表しました。いま事業を止めないと府民・国民がさらなる負担を強いられることになります。

膨らむ費用 負担は国民

 工事の遅れには、資材の高騰や人手不足で採算を危ぶんだ建設業者が入札に応じないことが指摘されています。主催者の日本国際博覧会協会(会長=十倉雅和・経団連会長)は打開のため、工事に従事する労働者に、時間外労働の上限規制を適用しないよう政府に要望したと報じられています。

 この規制は労働者の命と安全を守るため、24年4月に建設業界に導入されます。除外は論外です。規制が適用されたとしても、工期が迫るなかで開催に突き進めば、違法な長時間労働が横行するのは必至です。労働者を犠牲にした突貫工事は「いのち輝く未来社会のデザイン」という大阪・関西万博が掲げるテーマに反します。

 海外パビリオンの建設費用について経済産業省は、政府が全額出資する「日本貿易保険」を活用し、発注した国・地域から建設業者に代金が支払われない場合、通常の3分の1程度の保険料で代金の90~100%を補償する制度を設けました。不払いがあれば負担は国民にのしかかります。

 会場の建設費は国、大阪府・市、経済界が3分の1ずつ負担します。当初計画で1250億円でしたが、招致決定後の20年、1・5倍の1850億円に増えました。現在の物価高騰や計画の遅れによって、さらに費用が膨らみます。

 政府の「日本館」の建設に応札する企業がなく、随意契約で当初の予定価格を上回る契約になりました。会場に通じる地下鉄や夢洲へのアクセス道路などインフラの整備費も当初計画から大幅に膨張しています。

 岸田文雄政権は8月31日、国が主導して準備を加速する方針を打ち出しました。建設費の上振れに対策を検討するとしていますが、無駄な支出を増やすだけです。

 夢洲で万博を開くこと自体、事業が立ち行かない大きな要因です。もともと産業廃棄物と浚渫(しゅんせつ)土砂などでつくってきた人工島です。地盤は軟弱で、土壌に汚染物質が含まれています。汚染・液状化対策が必要です。島への出入り口は北側の橋と南東のトンネルに限られ、工事の資材や作業員もここを通じて運ぶしかありません。

カジノと一体の無謀開発

 2010年代から夢洲へのカジノと万博誘致を一体に提案し、安倍晋三政権の協力を取り付けたのが橋下徹元大阪市長や松井一郎元大阪府知事ら日本維新の会の首長です。維新と自民党、公明党の責任は重大です。

 万博の理念は、国際博覧会条約で、文明や進歩の達成を示し「公衆の教育を主たる目的とする」と定められています。ギャンブル依存症など人の不幸の上に成り立つカジノとは無縁です。

 本来の理念とかけ離れた大阪・関西万博の開催を強行する理由はありません。


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