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2023年9月2日(土)

主張

軍事費概算要求

日米融合し敵基地攻撃の危険

 防衛省は2024年度予算案(軍事費)の概算要求で、過去最大の7兆7385億円を計上しました。年末の予算案編成の際に具体的な金額が決まる米軍再編経費などは含まれていません。これら経費を除いた23年度当初予算6兆6001億円と比べ、1兆1384億円(17・2%)もの大幅増額です。岸田文雄政権が昨年末に決定した安保3文書の一つ、「防衛力整備計画」が、23~27年度の5年間で軍事力を抜本的に強化するため総額43兆円の軍事費をつぎ込むとしたことに沿ったものです。

常設統合司令部を創設

 防衛省は今回の概算要求の重点として▽各種スタンド・オフ・ミサイルの整備▽イージス・システム搭載艦の取得▽全国駐屯地・基地などの既存施設の強靱(きょうじん)化▽常設統合司令部(仮称)の創設―を挙げています。

 スタンド・オフ・ミサイルは、敵の対空ミサイルなどの射程圏外から攻撃できる長距離ミサイルです。相手国の領域内にあるミサイル発射拠点などを直接たたくことが可能です。岸田政権が安保3文書で初めて保有を決めた敵基地攻撃能力の具体化です。

 概算要求では、23年度に引き続き、「スタンド・オフ防衛能力」を強化するとして、12式地対艦誘導弾能力向上型、極超音速誘導弾、トマホークなど多様な長距離ミサイルの研究開発・量産・取得を進めるため計7551億円を計上しました。飛しょう距離や精密誘導の性能を向上させた新型ミサイルの開発費も盛り込みました。

 イージス・システム搭載艦は陸上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の計画破綻・撤回を受け、その代替として新造するものです。概算要求では「統合防空ミサイル防衛能力」の強化として、2隻の建造費を計上しました。2隻の取得経費は過去の計上分も含め約7900億円に上ります。

 8月18日の日米首脳会談で合意した極超音速兵器迎撃ミサイル(GPI)の日米共同開発費(750億円)も盛り込みました。イージス・システム搭載艦の建造では、GPIや敵基地攻撃可能な12式地対艦誘導弾能力向上型を搭載できるようにするとしています。

 これらの動きは、米国が同盟国を動員して地球規模で推進している統合防空ミサイル防衛(IAMD)構想に日本自らを組み入れるものです。同構想は、敵のミサイルを「ミサイル防衛」によって迎撃するだけでなく、相手国領域のミサイル発射拠点や航空基地を先制攻撃する作戦が含まれます。

 この点で、陸海空自衛隊を一元的に指揮する常設統合司令部の創設が概算要求に盛り込まれたのは重大です。防衛省はその理由の一つに、これまで米インド太平洋軍との調整機能が不足していたことを挙げています。統合司令部の創設によって日米の軍事一体化・融合は深く進むことになります。

暮らし関連予算を圧迫

 インド太平洋地域で米軍と自衛隊が一体化・融合して敵基地攻撃を行えば、最前線となる日本が相手国の報復攻撃にさらされることは必至です。概算要求の重点になっている自衛隊駐屯地などの強靱化はその備えに他なりません。

 地域の緊張を一層激しくし、国民の暮らし関連予算を圧迫する大軍拡推進の政治の転換が求められています。


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