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2023年8月29日(火)

主張

大震災100年と虐殺

政府は事実隠さず調査・謝罪を

 10万人以上の犠牲者を出した関東大震災から9月1日で100年です。教訓を学ぶ中で忘れてはならないのは、震災直後から“朝鮮人が放火や暴動”などのデマが拡散され、無辜(むこ)の朝鮮や中国の人々が、関東一円で軍、警察、自警団に集団虐殺された事実です。日本政府は、重大な人権侵害の全容を調べ公開し、謝罪すべきです。

植民地支配の中で

 当時の政府資料、元兵士や目撃者の証言、報道には、軍だけでなく、各地域で在郷軍人会や消防団、青年団を中心に自警団が急きょ組織され、刀、こん棒や竹やりなどを手に、朝鮮の人々を襲った多くの事件が記録されています。朝鮮人組織の集計で犠牲者は6000人以上に上ります。中国人の虐殺も700人以上と言われます。

 2009年発行の内閣府・中央防災会議の報告書は、当時の日本が「朝鮮を支配し、その植民地支配に対する抵抗運動に直面して恐怖感を抱いていた」「無理解と民族的な差別意識もあった」と指摘しました。日本は明治以来、朝鮮半島に大軍を派遣し、抵抗する何万もの人々を殺りくしながら植民地化を進めました。1910年の「韓国併合」後も三・一独立運動(19年)などの抵抗を弾圧しました。社会には朝鮮人への警戒、敵視が植え付けられました。

 地震直後から政府は「不逞(ふてい)の挙に対して、罹災(りさい)者の保護をする」などとして戒厳令を東京、神奈川、埼玉、千葉にしき、軍と警察の治安行動を強化しました。9月3日には内務省が「朝鮮人は各地に放火し、不逞の目的を遂行せんとし…爆弾を所持」「厳密なる取締を」と各地へ伝達し、デマを抑えるどころか拡散しました。同じ被災者である朝鮮の人々を取り締まれとの指示が、軍隊だけでなく、自警団による虐殺につながりました。軍は日本共産青年同盟委員長だった川合義虎など社会主義者、労組活動家らも虐殺しました。

 政府は公式謝罪や被害者・遺族への補償をしていません。虐殺の全容調査も拒んでいます。東京都の小池百合子知事は2017年、歴代知事が行ってきた日朝協会などによる9月1日の朝鮮人犠牲者追悼式への追悼文送付をやめました。政府や都の姿勢は、虐殺否定を含むヘイトスピーチや憎悪犯罪を許す温床になっています。小池知事は追悼文を送るべきです。

 世界では人権など普遍的な視点から、過去の植民地支配の見直しが広がっています。オランダ国王は今年7月、奴隷貿易や植民地支配を「人道に対する犯罪」として謝罪しました。ドイツ、英国も植民地時代にアフリカ各地で奪った美術品を返し、フランスは19世紀に虐殺したアルジェリアの独立活動家の遺骨を返還しました。米国では1921年の白人暴徒による黒人居住区の破壊・虐殺の犠牲者を大統領が100年で追悼し、人種間格差の是正を表明しました。

宣言引き継ぐなら

 日本政府は1998年の日韓パートナーシップ宣言で、過去の植民地支配への「痛切な反省と心からのお詫(わ)び」をのべ、両国は、若い世代はじめ国民の「歴史への認識を深めることが重要」と合意しました。岸田文雄首相は今年3月、同宣言を引き継ぐと表明しました。100年背を向けてきた虐殺の調査と謝罪、補償に踏み出すことが政府に求められています。


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