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2023年8月25日(金)

主張

食料自給率

向上にむけ農政の根本転換を

 農林水産省が7日発表した2022年度の食料自給率はカロリーベースで、21年度と同じ38%でした。主要国で異常に低い水準にとどまったままです。世界の食料情勢が激変し、先行きが不透明になる中、食料自給率の向上に真剣に取り組むことは、日本の政治に課せられた待ったなしの課題です。

外国依存が危機を広げた

 新型コロナの感染拡大やロシアのウクライナ侵略などに端を発した世界の食料危機は、食料の6割以上を外国に依存する日本の危うさを浮き彫りにしました。頻発する異常気象や新興国の食料需要の激増が食料供給を不安定にしています。穀物をバイオ燃料などに転換する動きも食料市場に影響を与えています。世界はもはや、食料を思うようにいつでも輸入できる状況ではありません。

 国内農業は歴史的な危機に直面しています。中心的な担い手である基幹的農業従事者は、この3年で20万人も減少しました。従事者の59%は70歳以上です。近い将来、担い手の激減は必至です。農地の減少・耕作放棄など生産基盤の崩壊も拍車がかかっています。

 飼料の75%、化学肥料や燃油、野菜のタネ、鶏のひなの大半も海外依存です。一昨年からの輸入価格の急騰で資材価格は軒並み高騰しました。政府が十分な対策を講じなかったこともあり、酪農をはじめ多くの農業従事者が経営破綻や離農に追い込まれました。

 成り行き任せでは、自給率の向上どころか、いっそうの低下を引き起こすことは避けられません。

 食や農をめぐる今日の深刻な事態は、歴代自民党政権が「食料は安い外国産で」という考え方で農産物の輸入自由化を際限なく進め、国内農業を切り捨ててきた結果です。欧米諸国では当たり前の価格保障や所得補償に背を向け、目先の効率や競争力を最優先する農政は完全に行き詰まっています。

 岸田文雄政権は昨年、食料の安全保障の強化を言い出し、食料・農業・農村基本法の見直し作業に乗り出しました。今年6月にまとめた農政の「新たな展開方向」をベースにして、来年の国会に法改定を提案するといいます。しかし、「新たな展開方向」は、従来の延長線上での小手先の対策を打ち出しただけです。危機を招いた歴代政権の農政に対する真剣な検証も、根本的な反省もありません。

 重大なのは現行基本法で農政の最大目標として掲げてきた食料自給率の向上を投げ捨てようとしていることです。野村哲郎農水相は今年3月の国会で「米国、カナダ、豪州からの輸入に日本の自給率をあわせると8割になる」などと答弁しました。自給率向上にまともに取り組む姿勢が欠落していることを示しています。

逆行する政治を改める時

 「新たな展開方向」は、現場の切実な願いである価格保障も拒否し、農業の大規模化路線も変えようとしていません。農林水産関係予算を毎年縮小し、自給率向上に逆行する施策を続ける政治は終わらせなければなりません。

 日本共産党国会議員団は23日、食料自給率の向上を国政の柱に据え、農政の基本方向を転換するよう政府に申し入れました。食料の輸入自由化路線をきっぱり改め、価格保障や所得補償など大多数の農家が安心して増産に励める条件を整えることが政府の責任です。


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