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2023年8月24日(木)

主張

損保カルテル疑惑

不適切な価格調整 徹底解明を

 大手損害保険会社4社による「価格カルテル」疑惑が問題になっています。東京海上日動火災保険、損害保険ジャパン、三井住友海上火災保険、あいおいニッセイ同和損害保険が私鉄大手・東急グループと契約した「企業向け火災保険」を巡って、保険料を同一水準で調整して入札した疑いです。公正取引委員会が解明に乗り出し、金融庁も4社の店舗・支店全てに報告徴求命令を出し調査を進めています。徹底的な究明が求められます。

4社の寡占化が進む中で

 不適切な価格調整が疑われるケースは、東急以外にも、仙台空港や石油元売りなどの企業向け保険で多数浮上しています。

 企業向け火災保険は、支払う保険金が巨額になるリスクがあります。そのため複数の損保会社が事前に決められたシェアに応じて保険を分担する「共同保険」という仕組みが一般的です。保険金が大きいため扱う会社は限られます。

 公取委は、会社同士が価格を取り決め、競争を不当に制限するカルテルに当たる可能性があるとしています。

 東急の問題では、契約更新前の保険料が3年間で20億円程度だったものを、更新後の提示価格は30億円程度にするよう損保各社の担当者が連絡を取り合っていたことが分かっています。東急側が横並びの額に疑念を抱いたため再入札となりました。

 仮に東急側が気づかなければ、企業側は割高な保険料負担を強いられることになります。それが企業のサービス価格に転嫁されれば消費者が不利益を被ります。

 1990年代半ばに10社以上あった主要損保は保険の自由化と規制緩和のもとで再編を繰り返し、現在の事実上の4社体制に固まりました。とりわけ企業向け保険では、4社の市場シェアは9割を超え、寡占化が進んでいます。

 火災保険は近年、災害の多発で赤字が続き、収益が悪化しています。収益改善のため価格競争を避けたい各社の意向が働きます。

 営業担当者が情報交換することが常態化し、寡占化で競争が働かない環境が今回の事態を生んだという指摘もあります。

 不適切な価格調整が行われた原因や大手損保の癒着の構造にメスを入れる必要があります。

 中古車販売大手ビッグモーターによる保険金の不正請求問題でも、損保ジャパンとの癒着の実態が明らかになり、損保大手の一部企業との癒着や顧客軽視の姿勢が厳しく批判されています。

 いずれの問題でも顧客の利益より自社の利益を優先させてきた大手損保のゆがんだ体質が一気に表面化してきたともいえます。損保業界とりわけ大手損保のあり方が問われています。

健全性損なう原因ただせ

 金融庁は、保険業法が目的とする保険募集の公正性と保険契約者保護の観点から、法令違反が見つかれば業務改善命令などの行政処分も検討するとしています。損保業界の健全性が損なわれている原因や大手損保のなれあいの慣習がなぜ生まれたのか。金融庁が、なぜここまで不正を見抜けなかったのか。曖昧にはできません。

 相互扶助の精神で、不測の事故に対するリスクを軽減するという保険本来の役割からの逸脱を許さない規制と監視が求められます。


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