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2023年8月18日(金)

主張

武器輸出協議再開

「平和国家」の理念放棄するな

 自民・公明両党は23日に武器輸出拡大に向けた実務者協議を再開します。両党は4月に武器輸出ルールの見直し協議を始め、7月に「論点整理」を行いました。殺傷能力を持った武器の輸出を認める方向を示しつつ、具体的な提言は秋以降に協議を再開しまとめる方針でした。しかし、岸田文雄首相は協議の早期再開を指示し、両党は前倒し開催を決めました。憲法に基づき国際紛争を助長しないとした「平和国家」の理念を投げ捨て、日本を「死の商人国家」にしようとする企ては許せません。

殺傷兵器も可能に

 昨年末に閣議決定された安保3文書は、武器の輸出ルールを定めた「防衛装備移転三原則」やその「運用指針」の見直しを検討すると明記しました。自公の協議はこれを受けて始まりました。

 7月5日の論点整理では、三原則の前文に、武器輸出の目的として「我が国にとって望ましい安全保障環境の創出」と「国際法に違反する侵略や武力の行使又は威嚇を受けている国への支援」を追加すべきだとしました。前者は米国が進める対中国軍事包囲網づくりの一環として狙われています。

 後者は、昨年3月に運用指針を改定し輸出を可能にしたウクライナの他にも対象国を広げようとするものです。これは紛争当事国への武器の供与に当たり、憲法9条の下では許されません。

 運用指針に関しては、輸出を認める武器の範囲を論点の第一に挙げています。

 現行では、日本と安全保障面で協力関係がある国に対し「救難、輸送、警戒、監視、掃海」の5類型にかかわる武器の輸出を認めています。政府は、これらに殺傷能力を持った武器は含まれないと説明してきました。

 ところが、論点整理は、「5類型に該当する活動の本来業務」のためとして、機雷処理や停船射撃用の銃砲など殺傷能力のある武器の輸出は可能という点で「意見の一致があった」としました。さらに「類型を撤廃すべきである」との意見もあったとしました。類型の撤廃は、殺傷能力のある武器の輸出の全面解禁につながります。

 論点の第二は、現行は認められていない他国と共同開発・生産をする武器の第三国への輸出です。

 論点整理は「我が国から第三国にも直接移転できるようにする方向で議論すべきであるという意見が大宗(大半)を占めた」としました。日本が英国、イタリアと共同開発・生産をする次期戦闘機が念頭にあります。日本が開発・生産に携わる戦闘機が第三国によって使用され、一般市民を含め死者が出る恐れがあります。

 第三は、部品の輸出です。今後退役するF15戦闘機のエンジンの輸出を想定し、部品そのものに殺傷能力がなければ可能にすべきだとの意見があったとしました。

世論は反対が多数

 首相が武器輸出拡大の協議加速を指示したのは、17日からの訪米の手土産とみられています。国会閉会中に協議を進めるのも「狡猾(こうかつ)な手法」と批判されています(「東京」7月29日付)。時事通信の今月の世論調査では、殺傷能力を持った武器の輸出を認めることに「反対」は60・4%で、「賛成」の16・5%を大きく上回りました。民意を無視し、独断で国の在り方を大転換するなどもってのほかです。


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