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2023年8月2日(水)

きょうの潮流

 宮崎駿監督の新作「君たちはどう生きるか」は賛否が分かれる映画です。冒険活劇にわくわくした、映像美に圧倒されたという絶賛から期待外れ、既視感のある場面が多いという否定派まで感想はさまざま▼主人公の少年眞人(まひと)は戦争中、空襲で母を亡くします。軍需工場主の父は、母の妹ナツコと再婚し、一家は地方へ疎開。ある日、姿を消したナツコを捜して、眞人が謎の塔へ入っていくと、そこは時空を超えた異世界でした。眞人はナツコを救い出すことができるか…▼眞人は塔の主から、世界の均衡を保つ役割を継いでほしいといわれます。「悪意に染まっていない石」を使えば、「奪い合い殺し合う」世界を変えることができると▼しかし「悪意」は眞人自身にもあります。どうするのか―。ここで映画の題名の元となった吉野源三郎著『君たちはどう生きるか』を思い起こしました。友達を裏切った自責の念に苦しむコペル君に、おじさんはパスカルの言葉を送ります▼「人間は、自分自身をあわれなものだと認めることによってその偉大さがあらわれるほど、それほど偉大である」「王位を奪われた国王以外に、誰が、国王でないことを不幸に感じる者があろう」。過ちを知る人間は、それを正せるのだと▼宮崎監督は漫画版『風の谷のナウシカ』のラストで、単純な「清浄な世界」を否定し「清浄と汚濁こそ生命だ」と書きました。みずからの汚濁と悪意を引き受けてこそ未来がある。10年ぶりの新作に込めた監督のメッセージです。


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