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2023年7月31日(月)

主張

最賃の目安答申

これでは物価高に追いつかぬ

 中央最低賃金審議会(厚生労働相の諮問機関)が28日、2023年度の最低賃金の引き上げ額の目安を答申しました。全国加重平均で時給1002円です。目安通りに決まれば、現行961円から41円の増額ですが、この水準では深刻な物価上昇にとても追いつきません。今後、都道府県ごとの地方最賃審議会で目安を参考に実際の改定額が決定され、10月ごろから実施されます。さらなる引き上げを実現する取り組みが必要です。

地域間の格差は広がる

 目安額は、都道府県を三つに区分して示されました。Aランク41円、Bランク40円、Cランク39円、それぞれ引き上げるとしました。現在、最高の東京は1072円で青森など10県の853円と219円の差があります。目安通りに改定すると、東京は1113円、青森などは892円で差は221円に広がります。普通に生活するのに必要な生計費は全国でほとんど差がありません。不合理な地域差を改めないことは大問題です。

 時給1002円は全く不十分です。月150時間のフルタイム並みに働いても年収180万円でワーキングプアの水準です。しかも1000円超は8都府県だけです。これでは国民全体の暮らしの底上げにはつながりません。

 6月の消費者物価は、前年同月比3・3%増と22カ月連続で上昇しています。食料品など生活必需品の高騰は、とくに低所得層に大きな打撃となっています。

 最賃審には、厚労省の委託を受け、三菱UFJリサーチ&コンサルティングが行ったアンケート結果(調査期間5月12~22日)が示されました。時給が最賃の1・1倍未満の人を対象にした調査です。それによると1年前と比べ暮らし向きが「変わっていない」が64・8%、「やや苦しくなった」「苦しくなった」が計26・7%でした。現在のようなわずかな引き上げでは、暮らしは上向きません。全国一律で1500円に引き上げることは待ったなしです。

 世界的なインフレーションのもと、各国は最賃を引き上げています。経済協力開発機構(OECD)が11日公表した23年雇用見通しによると、20年12月から23年5月の日本の最賃の伸び率は名目6・5%と、OECD平均29・0%の4分の1にも届きません。同期間の伸び率は、米国、イギリス、ドイツでは16~28%の増となっています。最賃額もドイツ、イギリス、フランスは1600~1700円台です。日本の大きな立ち遅れは明らかです。OECDは、「労働者を支援する最も直接的な方法は、政府の裁量下にある法定最低賃金を含めた賃金を引き上げること」と指摘しています。

内部留保課税で支援財源

 最賃引き上げは、経済の底上げにも大きく貢献します。労働者の購買力の上昇は、新たな売り上げにつながり、経済の好循環を生み出します。中小企業の経営者側でも最低賃金の引き上げを望む声が広がっています。

 最賃引き上げには、中小企業への支援が不可欠です。大企業がため込んだ513兆円もの内部留保に5年間で10%の時限的課税を行えば総額10兆円の財源が生まれ、中小企業支援を抜本的に強化できます。これから始まる地方最賃審の議論に向け、最賃の大幅上積みを求める運動を強めましょう。


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