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2023年7月22日(土)

主張

学術会議の改革

政府は下請け機関化断念せよ

 日本学術会議は16日の総会で、会員210人の半数改選となる次期会員候補105人の推薦名簿を決定しました。首相の任命をへて10月から新会員の6年の任期が始まります。

直ちに6人の任命を

 2020年、学術会議が推薦した会員候補105人のうち、菅義偉首相(当時)は6人を任命しませんでした。憲法の「学問の自由」と日本学術会議法の規定を踏みにじる暴挙です。

 岸田文雄首相が「一連の任命手続きは終了した」と、6人の任命を拒み続けていることは、政権の強権姿勢を示しています。昨年8月、松野博一官房長官が梶田隆章学術会議会長に対し、6人の会員候補の再選考を学術会議が行うよう提案したことも、違憲・違法な任命拒否を容認するよう迫ったものに他なりません。

 これに対し、学術会議は、「前期の選考プロセスに瑕疵(かし)はなく、提案は受け入れ難い」との立場を堅持し、6人を今回の推薦名簿に含めず、3年前の任命手続きとして引き続き求めるとしています。政府がなすべきは、直ちに6人を任命することです。

 ところが、政府・自民党は、任命拒否問題を「学術会議のあり方の見直し」にすり替え、政府の下請け機関に変質させようとしています。今年2月には、会員以外で構成する選考諮問委員会を設置し、会員選考に政府が介入できる法改悪を企てました。これには、「学術会議の独立性を損なう」と、広く学術界から反対の声が上がり、学術会議は4月の総会で「通常国会への提出をいったん思いとどまり」「開かれた協議」を求める勧告を採択しました。その結果、岸田政権は先の通常国会への法案の提出断念に追い込まれました。特筆すべきたたかいの成果です。

 しかし政府は法改悪の意図を放棄していません。6月に閣議決定した「骨太の方針」は、「日本学術会議の見直しについては、これまでの経緯を踏まえ、国から独立した法人とする案等を俎上(そじょう)に載せて議論し、早期に結論を得る」としています。

 内閣府は、「主要先進国並みの制度、体制を持った特殊法人など」を検討するといいますが、各国のアカデミーの設置形態は、その歴史的条件によって多様な特徴があります。日本の場合は戦後、「科学の振興を通じて世界の平和と人類社会の福祉に貢献する」という国の目標を実現するために「独立して職務を行う国の機関」として設立されました。

 学術会議の21年4月の総会決議は、民主的国家のアカデミーに共通するものとして(1)学術的に国を代表する(2)公的資格の付与(3)国家による安定した財政基盤(4)政府からの独立(5)会員選考の独立性という「5要件」を挙げ、それに照らして学術会議の現在の設置形態を「変更する積極的理由を見出(みいだ)すことは困難」と述べています。

設置形態の変更でなく

 岸田首相は通常国会で、「学術会議と意思疎通をはかりながら検討を進める」と答弁しました。この立場にたつのなら、設置形態の変更ありきで推し進めてはなりません。学術会議が求めているように、日本の学術の発展のために必要な学術体制全体の抜本的見直しを時間をかけて検討する「開かれた協議の場」をもつべきです。


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