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2023年7月9日(日)

主張

PFAS漏出

基地の立ち入り調査が不可欠

 東京都の多摩地域を中心に有毒性が指摘される有機フッ素化合物(PFAS)が井戸水などから高濃度で検出されている問題をめぐり、在日米軍が、同地域にある横田基地(福生市など5市1町)で2010~12年にPFASを含む泡消火剤の漏出事故が3件起こっていたことを初めて公式に認めました。同地域では、市民団体による大規模な住民の血液検査でも高濃度のPFASが検出されています。横田基地が主要な汚染源である可能性が濃厚です。

国の責任で原因究明を

 PFASは有機フッ素化合物の総称です。このうちの一部は分解されにくく人体や環境に蓄積することが分かっており、腎臓がん、コレステロールなど脂質異常症、胎児・乳児の成育阻害、抗体反応の低下などの危険があるとされています。米軍はPFASを含む泡消火剤を使い、各地の基地などで消火訓練を繰り返してきました。

 米軍が横田基地での10~12年の3件の漏出事故を認めたことは、日本共産党の国会・都議会議員らが6月29日に行った聞き取りに対し防衛省が明らかにしました。

 同省は今月4日には、東京都からの問い合わせに対し、3件の漏出事故の時期と場所について、米軍からの提供資料を確認したところ(1)10年1月に格納庫から(2)12年10月にドラム缶から(3)同年11月に保管された容器から―だったと回答しました。漏出量は明らかにされていません。

 しかし英国人ジャーナリストのジョン・ミッチェル氏が入手した米軍内部文書によると、横田基地ではPFASを含む泡消火剤が10年1月に格納庫から38リットル、12年10月に倉庫のドラム缶から最大95リットル、同年11月には消防署の貯蔵タンクから水で薄めて使う前の原液3000リットル超が漏出したと報じられています。(「東京」6月11日付)

 防衛省は東京都への回答で、米軍からは3件の漏出事故に関し「飛行場(注・横田基地)の外へ流出したとは認識していない」と説明を受けたとしています。しかし、基地外に流出していないという根拠は何も示されていません。

 防衛省の回答を受け東京都と横田基地周辺自治体の5市1町は5日、浜田靖一防衛相に対する要請で、「(漏出の発覚後)速やかに情報提供がなされなかったことは、基地周辺住民の不信感につながりかねず、極めて遺憾」と表明しました。その上で、漏出場所や量など詳細な情報を迅速に提供することや、国の責任で基地内のPFAS漏出にかかわる地下水への影響を調査・分析・評価し、結果を公表することなどを求めました。防衛省は真摯(しんし)に対応すべきです。

米軍の意向次第を正せ

 PFASは、横田基地だけでなく、沖縄県や神奈川県など各地の米軍基地の周辺でも高濃度で検出されています。汚染源の特定には、基地内への立ち入り調査が不可欠です。しかし、米軍に基地の排他的管理権を与えている日米地位協定の下、米軍から漏出の通報がなければ立ち入りの申請ができない、立ち入りができたとしても調査の方法や範囲、結果の公表も米軍の意向次第であるなど、大きな制約があります。

 地位協定を抜本的に改定し、自治体の迅速かつ無条件での基地への立ち入り調査を可能にすることが必要です。


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