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2023年6月27日(火)

主張

共生社会と認知症

希望持って暮らせる地域こそ

 先の通常国会で「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」が全会一致で成立しました。「全ての認知症の人が、基本的人権を享有する個人として、自らの意思によって日常生活及び社会生活を営むことができるようにする」などを基本理念に掲げました。国や地方自治体は基本理念に基づき、どんな取り組みをするか計画をつくることが求められます。計画作成の際、当事者や家族などの意見を聞くことも明記しました。認知症の人が個性や尊厳を保障されて、希望を持って暮らせる社会づくりへ向けた重要な一歩です。

対等な構成員として参加

 認知症の人は、厚生労働省の研究班によると2020年時点で600万人と推計され、25年には約700万人にのぼると見込まれています。65歳以上の5人に1人ということになります。どの人にも無縁な問題ではありません。

 一方で、「認知症になったら何もできなくなる」「恥ずかしいこと」という理解不足や誤解、偏見も少なくないため、当事者や家族を苦しめ、孤立させてしまいがちです。

 認知症基本法は、国民が認知症への正しい知識を持ち、理解を深めることができるようにすることも基本理念にしています。また、全ての認知症の人が社会の対等な構成員として地域で安全に安心して自立した生活ができるよう、意見表明をしたり社会活動に参加したりする機会を確保し、個性と能力を十分発揮できるようにすることも記しました。

 認知症の人もできることがたくさんあります。40代で認知症になる人もいるだけに、一人ひとりの状況に即し、その人の力が最大限生かされるようにしなければなりません。それが誰もが大切にされる社会の土台となります。

 認知症の人への「良質で適切な保健医療サービスや福祉サービス」が切れ目なく提供されることや、家族をはじめ支援者への支援が適切に行われることなども基本理念に盛り込みました。国や地方自治体の施策の一層の拡充が不可欠です。家族や支援者が抱え込まず、社会全体で支え、取り組みを進める上で行政の役割は重要です。

 認知症の人や家族が安心して暮らせる社会環境の整備はまだこれからです。昨年、認知症が原因で行方不明となった人は警察庁のまとめ(22日発表)で1万8709人になりました。統計を取り始めた12年からほぼ倍増しました。ほとんどの人は1週間以内に所在が確認されていますが、一昨年以前の不明者を含めると491人が亡くなっていました。痛ましい事態です。

 認知症の人が家に閉じこもるのでなく、外出しても安全に自宅に戻れる地域の仕組みを整えることが急がれます。商店街や駅をはじめとする交通機関などが連携していくことが欠かせません。

社会保障拡充する政治を

 認知症の当事者の視点を地域づくりに生かすことは、住みやすいまちづくりにもつながります。

 認知症の人や家族が暮らしやすい社会にする課題は、高齢者や障害者はもちろん子どもや子育て世代など全ての人たちにとって安全で優しい社会をつくることです。

 岸田文雄政権が企てる医療・介護の負担増や給付減などの制度改悪は、その土台を大本から掘り崩します。社会保障を拡充する政治への転換が必要です。


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