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2023年6月15日(木)

主張

「少子化対策」決定

希望も安心も見えないままだ

 岸田文雄政権が「こども未来戦略方針」を決定しました。「次元の異なる少子化対策の実現」を掲げたものの、若者や子育て世代が切実に願う高等教育費の抜本的な負担軽減や無償化の方策はありません。若い世代の所得を大幅に増やす具体的な手だても示されず、将来の希望も安心も見えません。日本を「子どもを産み育てづらい国」にしている構造を大本からただす姿勢が岸田政権に欠けているからです。若者に心を寄せて、生きづらさをなくすために真剣に取り組む政治への転換が急がれます。

「生きづらさ」直視せよ

 岸田首相は13日、こども未来戦略方針決定後の記者会見で「若年人口が急減する2030年代に入るまでが、少子化傾向を反転できるかどうかのラストチャンス」「不退転の決意」と強調しました。ところが、「子育てに冷たい国」の象徴である高すぎる大学学費の引き下げや無償化は盛り込みません。卒業後にのしかかる奨学金返済を大幅に軽減してほしいという声にも応えませんでした。

 「構造的な賃上げ」を打ち出しましたが、その中身は、雇用を市場原理にゆだねる「労働市場改革」が中心で、「賃下げ」の危険が極めて濃厚です。最低賃金を時給1500円以上に引き上げることにも後ろ向きのままです。

 首相は、「社会全体の構造や意識を変える」とも述べました。女性に育児負担が集中する事態を解消するとして、男性の育児休業の取得率向上などを挙げました。一方で、政府自身が「社会構造や意識」をどう改革していくのか、踏み込んだ説明はありません。

 女性に負担を強いる固定的な性的役割分担の意識は、日本社会のさまざまな分野に深く根を張っています。それが、日本を出産・育児が困難な国にしている大きな要因になってきました。ここに真剣に向き合い、本格的に切り込むことなくして、希望と安心の子育て社会をつくることはできません。

 「少子化対策」を議論した政府の「こども未来戦略会議」では20代の委員から「子どもを産む産まないに関わらず、まず、性別などによる生きづらさを無くすことをど真ん中に据えてほしい」との意見書が出されました。その中では「結婚の壁の解消:事実婚、選択的夫婦別姓制度、同性婚」や「ジェンダー平等と『共働き・共育てモデル』を支える社会規範の強化」などが提言されています。

 これらの意見は、未来戦略方針に明記されませんでした。岸田首相は13日の記者会見で同性婚について「どういった議論が進むのかを注視する」などと早期実現に背を向けました。個人の権利や尊厳、多様な価値観の保障を貫かない立場は直ちに改めるべきです。ジェンダー平等の推進を土台に据え直すことが何より重要です。

政策を徹底検証し見直せ

 日本で「子ども子育て」が政治の重要課題になって約30年です。予算の増額や給付の拡充が一定図られてきたとはいえ、世界でも「子ども子育てに冷たい国」になっている現実は深刻です。政策の徹底検証と根本的な見直しが不可欠です。日本はジェンダーギャップ指数が146カ国中116位という低い水準です。高等教育への公的財政支出も先進国最低クラスです。これらを国際水準に引き上げることが最優先の課題です。


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